第543話史が熱中症でダウン(6)

リビングで、美智子、由紀、里奈、華蓮が話をしていると、また玄関のチャイムが鳴った。

由紀が「今日は来客が多い」と思って、玄関まで出ると、インタフォンから

「俺だよ、涼子と祥子もいる」

つまり、マスターの声が聞こえてきた。


由紀は、驚きながら玄関を開けると、確かにマスター一家が勢ぞろい。


マスターは挨拶もそこそこ、単刀直入。

「史君はどうだい?」

かなり心配そうな顔になっている。


涼子は、祥子を抱きながら涙を流している。

「ねえ、可哀そうに、かなりの暑さで、そのうえ監督にひどいこと言われて」

「史君が何も悪いことしていないのに、負けた腹いせで怒鳴られるなんて」


由紀は、本当に驚いた。

「あ・・・まあ、わざわざ、ごめんなさい、ご心配おかけして」

と言いながら、マスター一家をリビングまで案内する。


さて、リビングでは美智子、里奈、華蓮もマスター一家を立ってお出迎え。

美智子

「心配させちゃったね、史はまだ顔を真っ赤にして話も出来ず、起き上がるなんて全然無理な状態」

里奈は涼子の涙で、またウルウル、話ができる状態ではない。


それでも華蓮は落ちついている。

「さっき、カフェ・ルミエールでも、問題になっていたけれど」

マスターの考えを聞きたい様子である。


そのマスターは難しい顔。

「ああ、そうだね、俺は違う筋からというか、自治会長からも話を聞いた」

「何でも、自治会長も野球の応援に行ったらしくてさ」

「まあ、ひどい暑さは、この時期仕方がないけれど」

「監督も応援に来てくれた人に、一言のお礼もなくね」

「負けたからって、それはないだろうと思うけどさ」


由紀がマスターに、そっと聞く。

「大旦那には?」


全員が注目する中、マスターはまた難しい顔。

「大旦那ねえ・・・言おうかと思ったけれど、まだ言っていないんだ」

「それは大旦那が動けば、監督は解任だし、あるいは学園長まで処分」

「政府にまで文句を言い始めるよ、きっと、何故こんな暑い時に炎天下で野球をするんだってね」

「ただ・・・そうなると・・・」

マスターは二階の史の部屋を見上げた。


美智子は、すぐにマスターの意図を理解した。

「そうかあ、史がそれを知ると、また悩むのか」

「自分のために監督が首になったとか、大事になるとか」


由紀も里奈も、難しい顔になった。

二人とも、史の悩みこむ性格を理解している。


しかし、華蓮はマスターの考えに納得できない様子。

「だめです、被害者が出ているんですから!」

「史君だけじゃないです、他に何人も」

「ここの学園だけじゃなくて、全国ですし、今後のこともあるんです」

珍しく強い口調になっている。


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