第538話史が熱中症でダウン(1)
史は、酷暑の中、高校野球の応援取材後、熱中症状態で帰宅、そのまま食事も取らずに、寝込んでしまった。
姉の由紀は、「呆れてものが言えない」と言いながら、史に文句を言い続ける。
「史!どうして、そうウカツなの!」
「毎年毎年でしょ!その熱中症ダウンって!」
「学習能力ってないの?史には!」
「ほんと!世話が焼ける!」
・・・・・・
ただ、史は、全く反論ができない。
いや、したいけれど、頭はガンガン痛いし、悪寒はひどいし、声を出すのも、しんどい状態。
そんな史を見て、由紀も少しずつ心配になってきたようだ。
珍しくやさしい言葉をかける。
「ねえ、史、ほんとにひどいの?」
「何か言ってよ・・・」
しかし、史からは全く返事がない。
というより、返事そのものが無理なようだ。
ついに由紀は、涙があふれてきた。
史に近寄って、額に手をあてたり、手を握ったりする。
「こんな、真っ赤に日焼けして・・・手も冷たい・・・」
「どうして体調が悪かったら、同じ新聞部の人に任せて帰って来るとかって出来ないの?」
「何でもかんでも、史が記事をかけばいいってものじゃないでしょ?」
・・・・・
いろいろ言っていると、ようやく史の口が開いた。
「姉貴、そんなことをいっても・・・」
やはり頭痛が激しいのか、間があく。
「野球部の監督は、僕を取材に指名してきたんだ、裏切れないって」
ただ、史の言葉は、そこまでだった。
言葉を出すのも限界、そのまま目を閉じてしまった。
由紀は、本当に涙があふれてきた。
そして、野球部監督の言動を思い出した。
「そうか・・・あの野球部監督か・・・」
「俺たちは炎天下で、根性を鍛えている、お前たち文化部も見習えって、口癖だった、どれほどどやされたか、数えきれない」
「去年も観戦中に熱中症で倒れた応援の学生に、根性と自覚が足りないって、怒鳴りつけていたっけ」
「・・・ほんと・・・どうにもならないのかなあ」
由紀が、史の部屋で泣いていると、母美智子が入って来た。
美智子
「どう?史は?」
由紀
「全然ダメ、話もできない」
美智子
「一緒に応援にいった史と同じクラスの親から、私にも連絡があったよ」
由紀
「うん、それで?」
美智子
「10人位、倒れて病院に搬送だって、それ以外も、家に戻っても史と同じ状態みたい」
由紀
「あの監督は、自分の非は認めないタイプだよ、根性不足、自覚不足を言い張ると思う」
美智子
「うーん・・・でも、半強制だよね・・・特に史は」
そんな話をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
インタフォンから、「里奈です」との声が聞こえてきた。
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