第539話史が熱中症でダウン(2)
由紀が玄関のドアを開けると、里奈は、すごく心配そうな顔で入って来た。
里奈
「私は、試合だったので、野球場には行かなかったんだけど、友達から史君のことを聞いて・・・」
由紀は、里奈に頭を下げた。
「ねえ、ごめんなさい、里奈ちゃんだって試合で疲れているのに」
「史は、とにかく子供の頃から体力が無くて、ちょっと炎天下に出ると、倒れちゃうの」
里奈は、首を少し横に振り、
「いえ、とにかく今日は、メチャクチャ暑かったし、何でも36度を超えていたそうです、そのうえずっと野外でしたから・・・」
母美智子も二階の史の部屋から降りてきて、里奈の前に。
「ほんと、もうしわけないねえ、わざわざ」
「今は、ダウンして話も何も、無理かなあ」
里奈はがっかりした顔。
「そうですか・・・少しでも顔が見たかったんですが」
由紀が、美智子の顔を見る。
「ねえ、母さん、見せるくらいならいいかなあ」
美智子も、少し考えて
「そうだね、話は出来ないけれど、見るぐらいなら・・・」
結局、三人は2階の史の部屋に入ることになった。
里奈は史の惨状を見るなり涙。
「史君、大変だったね」
由紀も、その涙でウルウル。
「ねえ、あのアホ監督・・・体力自慢って、ああだから嫌い」
美智子は、里奈に聞いた。
「ねえ、試合そのものは?」
里奈は、難しい顔になった。
「最初はリードしていたみたいなんですが、最後にサヨナラホームランされて負けたみたいです」
「それはいいんだけど・・・その後が・・・」
由紀は、里奈が何か知っていると思った。
「里奈ちゃん、何かあったの?」
美智子も里奈の次の言葉に注目する。
里奈
「私が野球部員に聞いたのは、野球部の監督が、野球部員全員を、野球場前の広場に集めて2時間のお説教」
「史君は、そのお説教が終わるのを、同じように立って待っていたそうなんです」
由紀は首を傾げた。
「いったい、何で炎天下で2時間も説教するの?そんなに話す内容があるの?」
里奈は、また首を横に振る。
「とにかく、今回の負けは、野球部員の根性と自覚が足りないということを、延々と繰り返すだけ、話も興奮してしまって、野球部員もよくわからなかったって・・・」
美智子は、「はぁ・・・」とため息をつく。
由紀も、呆れ顔になった。
その里奈の顔は、ますます涙にあふれた。
じっと、史を見つめている。
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