第515話カフェ・ルミエール文化講座構想(6)

清が作り始めた「和洋折衷」の料理は、「湯葉と鴨の赤ワインソース」。

湯葉はコンソメで煮て、焼いた鴨をその上に乗せる。

ソースは、赤ワイン、マディラ酒、デミグラスソース、湯葉の煮汁をとろみがつくまで煮詰めたもの。


マスターは、清の料理を面白そうに見ている。

「なかなか手際がいいなあ、さすがお屋敷のシェフ」

清は謙遜する。

「いえ、思いつきです、どうなることやらです」

マスターは、少し笑う。

「大丈夫だって、その香りで、すごく美味しいってわかる」


その香りは、女子たちにも、届いていたらしい。

洋子がまず、キッチンに入って来た。

洋子

「なんか、作るところを見たくなって」

「まあ、大丈夫と思うんですが」

そして、他の女子も入ってきてしまったので苦笑い。

「なるべく早く焼きますので」

と言うけれど、全員が清の手元を見ている。


奈津美

「手の動きが細やか、無駄がない」

結衣

「はぁ・・・火の使い方が・・・上手、切れがいい」

「私、清さんの受講生第一号になる」

華蓮は、クスッと笑う。

「由紀ちゃんと、ぶつからないように」

その言葉で、また全員が笑っている。



「湯葉と鴨の赤ワインソース」は、結局全員分作り、食べることになった。

マスター

「いや、いい仕事っていうのか、塩梅がピシッと決まっている」

洋子

「鴨と湯葉の食感の違いがまた、面白い」

奈津美

「両方とも、噛みしめるほどに味が出て来て、それでいて調和しています」

結衣

「この組み合わせの発想を、瞬時になんて、すごいです」

「はぁ・・・食の極楽です」

美幸もうれしそう。

「ここに入って良かった、最高です」


華蓮は、ホッとした表情。

「なんとかこれで、仲良しになれたようだ」

「後は、細かい作業かなあ」

そこまで考えて、由紀と史の顔が浮かんだ。

「由紀ちゃんと、史君の顔も見たいなあ」

「もちろん晃さんと美智子さんも、当然」

「とにかく、あの一家にも、ご挨拶をしないといけない」


京極華蓮の次の予定は、これで決定したようである。


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