第503話史の新しい難題 真由(4)

由紀は、また声を落として話し出した。

「その真由って、新二年生なんだけれど、外見はすごく可愛らしい、スタイルもいい、明るい感じがある」


母美智子は、フンフンと聞いている。


由紀

「問題は、キレると、ものすごい文句を言い出すこと」

「気が合う人には、すごくいい顔をする、でも一旦嫌いになるとか、嫌われたって思いを感じた人には、メチャクチャに文句を言う」

「あることないこと言いふらす、上下関係も男女関係も、全て無視」

「合唱部でも、暴言王なの」

「それでいて、叱っても、その時だけシュンとした態度」

「部屋を出たら、ケロッとして、私が見ていないことろで、アホ部長に叱られたって大笑いする」

どうやら、由紀には、そんな経験があるようだ。


美智子は、少しずつわかってきた。

「そうなんだ、そういう子だと、史には向かない」

「史は繊細だし、悩みこむタイプ、しっかり支える里奈ちゃんみたいな子が一番だよ」

「なるべく、その真由って子には、近寄らないというか、近寄らせない方がいい」


由紀は、まだ難しい顔。

「ところが、真由は、超シツコイ」

「相手が、困るくらいに、自分の主張を繰り返す」

「それは違うよって、冷静に指摘しても、絶対に自分の非を認めない」

「合唱部の練習サボっても、連絡が無かったって、言い切る」

「ラインの履歴が残っていても、見ていないって、怒りだす」

「楽譜を忘れるなんて、日常茶飯事」

「それを叱っても、ヘラヘラと聞き流す」


美智子はため息をついた。

「そうだよね、いるよね、そういう人って」

「自己中心的で、無神経のカタマリみたいな人」

「史なんか、振り回されて、オロオロして悩むだけだね」


由紀の顔が、また難しくなった。

「真由は、弱者に冷たいの」

「普通ね、道端で転んで泣いている小さな子供を見れば、『大丈夫?』くらいは声かけるよね」


美智子が頷くと、由紀

「真由は、そうじゃないの」

「『ジャマジャマーーー!どけーーー!』って、大笑い」

「周りが、呆れて小さな子を抱き起こしたりすると、真由は『あほくさい、何でそんなことするの?』だよ」


由紀の言葉は続いた。

「そんな真由だけど、他人の不始末は絶対に許さない」

「合唱部で風邪で休むっていった女の子にも、『自己管理のカケラも出来ていない』って、30分も文句を言い続けたとか」

「それでいて自分が風邪をひいた時は、その女の子のせいにする」

「そして、それを、その子の顔を見るたびに、ずーっと言い続ける」


母美智子は、「はぁ・・・難題・・・」

深いため息をついている。







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