第502話史の新しい難題 真由(3)

由紀は、今の時点では、真由について、それ以上は史に言わないことにした。

それは、史自身が、真由を全く認識も意識もないことはわかっているし、真由についての不用意な情報を与えて、史が悩む姿を見たくなかったから。


由紀と史は、家に帰った。

母美智子に、一応報告する。


由紀

「清さんと、何店か懐石の店を調査することになった」


「やはり、京都のお屋敷そのもののやり方では、難しいと思う」

「それで、あちこち、実感してくるみたい」


母美智子も頷く。

「そうだよね、清さんも、こっちで勝負するなら、そうなるよね」

「でも、あのまま京都のお屋敷にいつまでもって、それももったいない」

「料理人は、あちこちで、修行した方がいい」

と、ここまでは、普通の会話。


由紀は、史が部屋に戻っていったのを確認してから、母美智子に相談を持ちかける。


由紀

「ねえ、お母さん、難題が発生した」


母美智子は、意味がわからない。

「何?由紀?懐石食べ歩きで、服がないから金欲しいってこと?」


由紀は、首を横に振る。

「そんなんじゃないって!史のことだって」


母美智子は、ますます意味がわからない。

「史がまた何かトラブルなの?今度は何?」


由紀は、もう一度二階の史の部屋のドアがしまっているのを確認する。

「あのさ、まだ何かが起こっているわけじゃないの、起こるリスクがあるの」


母美智子は、由紀の言葉が面倒だった。

「だから、何?具体的に言わないとわからないじゃない」

口調も、少しキツイ。


由紀は、少し声を落とした。

「あのさ、実はね、合唱部の新二年生になった真由って子がいるんだけど」


母美智子も、由紀の顔を見て、ピンと来たらしい。

「ふむ・・・というと、史の女難の話?」

面倒そうな顔から、真顔になった。


由紀は、それでホッとした。

いつもは、叱られてばかりなので、話に乗って来る母には、ホッとする。

「その真由って子がね、史にご執心なの」


美智子

「だって、史には里奈ちゃんって、誰もが認める彼女がいるじゃない」


由紀は、首を横に振る。

「うん、真由もそれをよく知っている、でも、どうしても、史と話したいんだって、私に何とかして欲しいって」


美智子

「そんなの、由紀がキッパリ言えばいいじゃない、史が言ってもいいけど」


由紀は、また首を横に振る。

「それが、そんなに簡単な子じゃないの」


美智子は、また、首を傾げた。

「その簡単な子じゃないって?具体的には?」


由紀は、もう一度二階の史の部屋のドアを確認している。

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