第485話史と洋子の不思議なデート(7)

次の皿は

「黒キャベツとインゲン豆、トスカーナ・サラミ、レバーペーストのクロスティーニ」

小さなカリカリトーストの上に、様々なものが乗っている。


史は、それを見てうれしそうな顔。

「すごいなあ、面白い」

とにかく目を輝かせる。

洋子は、そんな史の顔を見て、少し機嫌を直す。

「うん、それはいいから、どんどん食べて」

そして史が、ようやく食べ始めたのを見て、自分も食べ始める状態。


史は一つ一つ確かめるように食べる。

「すべて味が違う、乗っているのが違うから当たり前なんだけど、ブルスケッタだとニンニクの味が強くなるから、こっちのほうがいい」

洋子は、そんな史の味覚は評価する。

「そうだね、確かにニンニクと史君はイメージが違う」


三皿目は、

「 パスタ 、アマトリチャーナ」

玉ねぎとパンチェッタ、チーズから作ったパスタソースがかけられている。

ベースはトマトソース、肉の旨みとトマトの酸味が調和して、ミートソースよりは軽めながら、しっかりとコクはある。


洋子が史に説明をする。

「ローマの北のラツィオの名物パスタ、アラビアータと似ているけれど、唐辛子を使わないところが違う」

史は素直に反応。

「はい、とにかく美味しいです、唐辛子を使わない方が素材の旨みがわかります」

少しずつ味わって食べている。


そしてメインの皿が登場した。

「フィレンツェ風ステーキ」


洋子は、ニッコリとほほ笑むけれど、史は目が丸くなった。

とにかく大きなステーキ、一人分で300グラムはある。

その上、骨付き肉で、野菜の焼いた物の盛り合わせとジャガイモが、どっさりと付いて来た。


洋子は、目を丸くして、あ然となっている史に

「さあ、これくらい食べきらないと、とても留学できない」

「小食なら、イタリアオペラなんて無理」

と、けしかける。


それを言われた史

「だって、さっきのパスタでおなか一杯」

「そのうえ、これ?」

かなり焦り顔。


しかし、洋子は、フフンと笑う。

「だって、この後、こってり系の甘いものが出るんだよ」

「食べないと失礼、いや、食べきらないと失礼」

「特に、史君は、若い男の子、食べ盛りで当たり前なんだから」


史も、その言葉で観念したらしい。

「ふぅっ」と息をついてから、懸命にステーキを食べ始めた。



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