第484話史と洋子の不思議なデート(6)
さて、史のキョトン顔と、洋子のハラハラ顔はともかく、宴会が始まってしまった。
ステージではルクレツィアがスピーチをしているけれど、イタリア語なので史にはさっぱりわからない。
かろうじて、洋子は聞き取れるらしい。
洋子
「つまりね、紀元前からの歴史を持つイタリアの料理の自慢」
「フレンチだって、カトリーヌ・ド・メディシスがローマとフィレンツェとか、イタリアの料理を持ち込んでからの歴史」
「それまでは、ナイフとフォークも使わず、手づかみだったとか言っている」
そんな洋子の解説を史は、フンフンと頷いている。
「すっごいなあ、洋子さん、洋子さんに教わろうかな、もっといろいろ」
すると洋子は、うれしくなった。
「うん、マジで個人レッスンする、手取り足取りだよ」
「ルクレツィアの前に私が、しっかりと・・・」
とまで言いかけたけれど、当の史は途中から聞いていない。
洋子はムッとするけれど、それは仕方がないことだった。
何しろ、前菜が運ばれてきてしまった。
まず
「洋梨とペコリーノチーズのサラダ」
ムッとしていた洋子は、途端ににっこり。
「ペコリーノチーズは、羊のミルクを原料とした、イタリア最古と言われるチーズだよ、古代ローマ帝国の時代から食べられてきたと言われている、長い長い歴史のあるチーズ」
史も目を丸くして、チーズを口に含む。
「白くて硬いね、保存目的だったのかな、塩分が強いけど、洋梨と合わせて美味しい、でも、羊のミルク独特の甘い香りがする」
洋子は、もう少し説明を加える。
「ペコリーノには塩気が強いロマーノとマイルドなトスカーノの二種類があってね、これはトスカーノ、ルクレツィアがフィレンツェだからそうなった」
「ロマーノはどちらかと言えば調味料とか、お酒のつまみ」
「トスカーノはマイルドだから、前菜でも大丈夫」
史がまた一言
「そういえば、サラダの語源って塩かな、古代ローマの最初の産業が塩産業、サラリーマンの語源も、古代ローマの塩で報酬を支払うとかなんとかからって本で読んだことがある、つまり塩がふんだんに使えたのかな」
そんなマニアックな講釈を言い出す史に洋子は、少し気に入らない。
「ほら!そんなこと言っていないで、どんどん食べる!」
「食欲見せないと、ルクレツィアが何を言ってくるかわからない」
しかし、史は、洋子にニッコリ。
「洋子さんに、今夜はお任せです」
「すっごく幸せです」
洋子は、そこで顔が赤い。
ムッとしたり、ハラハラしたり、赤くなったりで、今夜の洋子は、なかなか忙しい。
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