第475話三年生になった史と里奈のデート(9)
史と里奈は、自由が丘の駅から、また私鉄に乗り、帰路についた。
里奈が史に話しかける。
「本当に楽しかった、思いがけなくバームクーヘンまでいただいてしまって」
史もうれしそうな顔。
「そうだね、菊田のおばさん、そういえば小さい頃から、いつもお土産もらった」
里奈は、バームクーヘンの箱を見ながら、にっこりとする。
「いい人だね、実はバームクーヘンも欲しかったから」
史は、そんな里奈に聞きたいことがあるようだ。
「ねえ、里奈ちゃん、菊田さんと内緒の話をしていたみたいだけど何?」
ただ、里奈はその質問には答えない。
「えへへ、内緒だよ、ふふ」
と言って、史の手をギュッと握る。
史は首を傾げ
「うーん・・・」
となるけれど、史も里奈の手をしっかりと握りかえす。
里奈は、途中で話題を変えた。
「ところで、史君、お姉さんのお土産は買ったの?」
すると史はキョトン顔。
「いや、大福もあるし、菊田さんにバームクーヘンもらったしさ、あれで最近ダイエットしているって言ってたから」
つまり、「特別のお土産」はないという答えをする。
すると、里奈は、少し強めの言葉。
「もーーー・・・しょうがないなあ、あれほど史君のことを心配してくれるお姉さんっていないよ」
「私、お姉さん大好きだもの」
しかし、史は「今さら帰り道だし」で、少し困り顔。
里奈は、そんな史を見透かしていたようだ。
「それでね、私からで、これを渡して」
と、最初の雑貨店で買っていたらしい、何かの包みを史に手渡す。
史が、「え?何?」と驚きながらも、受け取ると
里奈はクスッと笑う。
「その包みの中身については、私が後でお姉さんに説明します」
「だから、史君はお姉さんに手渡すだけ」
史は、ますますわからないような顔になるけれど、それ以上聞きだせそうにない。
ただ、いろいろ思うのは「母美智子といい、姉貴といい、僕に内緒で何を連絡しあっているのかなあ、何かコントロールされているような気がする」ということ。
さて、最寄りの駅で降り、史は里奈を自宅に送り届け、しっかりと里奈の母と祖母にお礼を述べてから、帰宅した。
家のリビングに入り、母美智子に「指定お土産の大福」と「もらってしまったバームクーヘン」を渡していると、二階から姉の由紀が降りてきた。
そして史に一言。
「ほんとに、里奈ちゃんって気がきく、すっごい可愛いマグカップをいただきました、今度は私が里奈ちゃんとデートするから、史はお留守番しなさい」
「姉に無神経な史とは、大違い」
そこまで言って、由紀はスッキリしたらしい。
ニッコリと笑って、いきなり大福餅を食べ始めている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます