第440話銀座、日本橋散歩(6)
史も後ろの方から聞こえてくる騒ぎ声には、気がついたようだ。
「何かあったの?」
と振り返ると、女子高校生たちから一斉に声がかかった。
「史くーん!」
「こっち向いてーーー!」
「あ!向いてくれた!」
「お姉さんたちと銀座デートなの?」
「楽器屋さんに入るの?」
「一緒に入っていい?」
・・・・
とにかく大騒ぎになっている。
史は「えーーー?」と、どうしたらいいかわからない状態。
愛華は、目が点になった。
「マジ?史君!この人たちって何?」
加奈子もそんな感じ。
「史君って、アイドル?」
そんな愛華と加奈子に、由紀が頭を下げる。
「愛華ちゃん、加奈子ちゃん。ごめん」
「この子たち、私の高校の合唱部の後輩なの」
「ほんと、こんな時にやかましくて・・・」
と言うけれど、当の史は一瞬にして、合唱部女子高生たちに囲まれてしまっている。
おまけに、合唱部顧問の岡村顧問まで、史の前に立った。
岡村顧問は史に
「おや、史君、あれ?由紀ちゃんもいるね、今日は銀座の楽器屋さん?」
と声をかけてくる。
史も、岡村顧問の前では、シャンとする。
いつものようにキチンと頭を下げ
「はい、京都の従妹の加奈子さんと、遠縁の愛華さんが、都内に遊びに来たので、案内をしています」
と、しっかりと事情を説明する。
すると、岡村顧問は、加奈子と愛華に、会釈。
「ああ、昨日、例の事件の話が、内田先生と榊原先生からあったよ」
「あなたたちも、音大に出向いたんだね」
「それはともかくさ、あなたたちも音楽は好きかな」
いつものほがらかな口調で話しかける。
愛華も、かつての有名声楽家の岡村の顔は知っているらしい。
「はい、岡村先生ですね!何度もオペラを拝見しました、ベルディもワーグナーも最高でした、感激です!こんな直接お声をかけていただいて」
愛華も、うれしいようだ。
とにかく目がキラキラしている。
加奈子も、愛華と同じような反応。
「はい、私、フルートを吹きます」
「声楽も大好きです、今日は本当にお目に書かれて幸せです」
加奈子の顔もパッと輝いている。
史が岡村顧問にたずねた。
「先生と、合唱部の皆さんは、今日は?」
史としても、岡村顧問と合唱部がほとんど銀座にいることが、不思議だった。
岡村顧問の答えは、簡単。
「ああ、プロの合唱団の練習見学にね」
「練習場所が近くでさ、銀座も近いから、一緒に散歩でもってね」
史と由紀が頷いていると、岡村顧問はニッコリ。
ちらっと合唱部の面々の顔を見てから、史の肩をポンと叩いた。
岡村顧問には、何か考えが浮かんだようだ。
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