第439話銀座、日本橋散歩(5)
お香の店を出た一行は、四丁目交差点を越えて、七丁目の楽器店に向かう。
史が一応説明をする。
「たくさんのピアノとか、楽器とかある」
「地下には楽譜もかなりあるよ」
「楽器関連グッズもたくさん」
愛華が、即反応。
「なあ、史君、少し弾いて」
加奈子も、途端にニコニコ。
「昨日、聞けなかったから、耳の保養が出来るなあ」
由紀は、何も言えない。
昨日は、史のピアノを弾かせなくて、少々トラブルになったから。
史は、ただ笑っただけ、それよりも街を見ている。
「それにしても、新しくて大きなショッピングモールも出来ているし」
と、六丁目あたりで目を丸くする。
由紀も
「そうだねえ、子供の頃と全然違うなあ」
「羊羹屋さんの通りのほうは、そんなに変わらないかな」
愛華は
「とにかく素敵や、こういうのを見ると、来年は絶対に都内に住むしかない」
加奈子も、目が輝いている。
「そうやなあ、史君も由紀ちゃんもおるし、マスターの料理と洋子さんのお菓子もあるしなあ、大旦那も奥様もいるし・・・都内のほうが自由やし」
さて、一行は、そんな状態で、お目当ての楽器店にたどりついた。
史が店の前で
「じゃあ、ここは馴染みだから、案内します」
と笑うと、
愛華と加奈子は、「史のピアノ試奏」への期待で、ますますニコニコ顔。
由紀も、「今日ばかりは仕方がない」と思っていたけれど、突然、後ろから「トントン」と肩を叩かれた。
由紀が「え?」と思って、後ろを振り向くと、目に入ったのは高校の合唱部の後輩たち。
そして、さっそく大騒ぎになる。
「由紀部長!ここで何やっているんですか?」
「部長じゃないって!もう女子大生だって!」
「由紀先輩の前の方に歩いているのは史君?」
「えーーー?姉と弟で銀座デートなの?」
「やだーーーだったら私が史君とデートする!」
「だめだって!史君の相手は私がいい!」
・・・・・・・・
とにかく、女子高校生たちの、質問と大騒ぎの連発。
人数にしても、六人から七人・・・近寄ってくる女子高生も、合唱部なので、もっと多くなることは決定的。
由紀は焦った。
「もーーーあなたたちも、銀座だったの?」
「姉と弟でデートなんてしないって!やだ、史となんて!」
「京都から親戚の女の子が来ているので、東京を案内しているだけだって!」
こうなると、本当のことを言わないと、どうにもならない。
そして「親戚の女の子」と言えば、口うるさい後輩女子たちも、スンナリと撤退すると考えた。
・・・しかし・・・なかなか「スンナリ」とは、話が進まない様子。
何しろ、女子高校生の後ろから、合唱部顧問の岡村先生が歩いてくるようだ。
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