第437話銀座、日本橋散歩(3)

史たちの一行は、銀座四丁目の交差点に立った。

お目当ての和光の時計や、三越も向かいに。

少し歩けば歌舞伎座もある。


愛華は、本当にうれしそうな顔。

「うわーーー・・・なんか、すごいなあ」

「京都と全然違う、とにかくお寺も神社も見えないのがいい」

「外国人も多い」


加奈子も感激している。

「ほんま、都会やなあ、キラキラしとる」

「佃みたいな下町も好きやけど、これは別格や」

「立っているだけでウキウキや」


愛華と加奈子の笑顔を見て、史はホッとした様子。

そして、二人に声をかけた。

「じゃあ、少し歩こうよ」

由紀も、

「見飽きないほど、楽しいお店があるよ」

と、二人に促して、ようやく一行は歩きだす。


さて、特に愛華と加奈子は、いろんなものが面白くて、欲しくて仕方がない。

四丁目交差点からまず、行列が出来ているあんぱんで有名なパン屋では「かりんとう饅頭」を買う。

また少し歩いてiPadの店を見かければ、どんどん中に入って、操作に夢中。

史が

「加奈子ちゃん、持ってなかったっけ?」

と聞くと

加奈子

「うちのは、Androidなんや、たまにはiPadもなあ」

愛華は

「うちはiPadやけど、こっちのほうが新しい」

由紀は、「そんなに違わないのに」と、首を傾げている。


そのiPadの店を出ると、ブランド品の店を中心に、とにかく興味深そうに見て歩く。


デパートを過ぎた時点で、史が

「お香の専門店があるよ、この近くに」

と口に出す。


すると愛華と加奈子が、即反応。


愛華

「ここまで来て、行かないのはよろしくない」

加奈子

「たまには、和風以外の香りも欲しい」

愛華

「史君って、お香にも詳しいの?」

加奈子

「ほーー・・・やはり源氏学者の息子さんやなあ」


そんな二人に史

「うん、京都のお屋敷で、いろんなこと教えてもらった」

「源氏の薫物合わせに出てくるのは、全部試したよ」

「違いも、わかる、子供の頃から」

全く普通の顔で、話をする。


由紀は、「そう言えば」と思い出した。

そして、愛華と加奈子に

「うん、史は、子供の頃から、鼻が敏感」

「お香もそうだけど、料理の香料も、すぐわかる」

「奥様が、香道を習ってもいいって、言っていたなあ」

「史が音楽で失敗したら、その道もいいかも」

と話してしまう。


愛華は、また史にウットリ顔。

「へえ・・・ますます史君っていいなあ」

加奈子は、ハッとした顔。

「そう言えば、奥様に聞いたことある、史君に奥様が熱心に香道を進めた話」


史は、

「音楽で失敗しないって」

「やだ、香道って、正座だから脚がしびれる」

そんなことを言って、反発をしながら歩いていく。








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