第431話マスターのフルコース(2)

三品目は

「ホワイトアスパラガスと生ハム、アーティチョークのロースト

 バターソース」


ここで、美智子がクスッと笑う。

「これ、マスターの定番なの、何回食べても飽きが来ない」

晃も、うれしそうな顔。

「史も、ニコニコして食べている、少し元気が出てきたようだ」

美智子も、隣のテーブルの史の顔を見る。

「少し怒りすぎたかな、確かに史自身の責任じゃないけれど」

晃は美智子に

「そう思うよ、美智子は一族に神経使いすぎ、確かに難しい面もあるけれど」

美智子は、史を見ながら、ポツリと

「うん、ついついねえ・・・」


四品目は

「舌平目のクルスタード 小海老のグラタン」


愛華は目を閉じて味わっている。

「すごいなあ、濃厚にして、とろける」

加奈子も

「京都のお屋敷だと、淡白な風味が良しとされることが多いけれど、これはドッシリ系」

大旦那も感心している。

「まさに絶品だね、これは、美味というか芸術的に美味しい」

そんな大旦那に奥様が笑う。

「あらあら・・・不思議な日本語ですこと、普通にすごく美味しいで充分」

大旦那は、頭をかいている。

洋子も、ニッコリ。

「これもマスターの得意料理、目を閉じると、横浜のホテルが浮かんでくる」

奈津美、結衣、彩は、味の深みに取り込まれてしまって、もはや食べるだけ状態になっている。


メイン料理が運ばれてきた。

「仔羊ロースト タイムをきかせて」


史が目を丸くした。

「うわ!すっごい!完璧、タイムの使い方が」

由紀は、一口食べて、幸せ満面状態。

「噛むごとに、元気が出てくる味」

愛華も感激。

「うわーーーこれがマスターの・・・都内に出てきてよかった」

加奈子

「はぁ・・・うちも、都内に出るかなあ、マスターの料理を食べたいし、教わりたいし」

他には声が出なかった。

何しろ、食べるのに夢中、美味しいので話をするのも、もったいないという状態らしい。


デザートは、マスターと洋子が打ち合わせをしていたらしい。

「色とりどりの五種類のマカロン バニラ ピスタチオ チョコレート ラムレーズン バラのクリーム」


特に史の顔がパッと明るくなった。

「洋子さんの得意料理だ!このバラのクリームが一番好き」

まず、バラのクリームのマカロンをうれしそうに口に入れる。


史の明るい顔を見て、洋子はうれしそうな顔。

「ねえ、史君、元気になってよかった、ホッとした」

そこまで言って、もう一言あるらしい。

「一度ね、つきあってもらいたい所があるの」

洋子の顔が、真顔になり、史に「後で見て」とメモを渡している。


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