第430話マスターのフルコース(1)
マスターからの連絡があったので、地下ホールにいた全員が、カフェ・ルミエールに戻った。
そして、マスターと由紀の相談の通りに、史の隣には洋子と奈津美、また史の前には結衣と彩が座った。
本当は愛華と加奈子も、史と一緒のテーブルに座りたかったのだけれど、由紀が「これ以上、母美智子に史を責めさせたくない」との話をして、納得をさせた。
そして、マスターも、その座席配置を見て、ホッとした様子。
まだまだ暗い顔の史に、洋子が話しかける。
「史君、元気だして、お母さんも心配してのことだから」
奈津美も史にピッタリ寄り添う。
「史君も、神経使いすぎ、もっと適当ぐらいがいいよ」
結衣も、史の表情が不安。
「私達は何でも聞いてあげる、大好きだから、仲間だし」
彩は少し明るい顔で
「ねえ、せっかくマスターのフルコースを食べられるんだから、しっかり食べようよ」
そこまで声をかけられて、史はようやく少し笑う。
「うん、そうだね、せっかくだよね」
「マスターの本気の料理、楽しみ」
その史の言葉に、洋子、奈津美、結衣、彩は胸をなでおろし、別のテーブルで見ていた由紀も、頷いている。
前菜が運ばれてきた。
「サーモンのフリヴォリテにソローニュ産キャビアと爽やかなワサビ添え」
史が即座に反応した。
「なんか、ロブションみたいな感じ、サーモンのフリヴォリテにキャビアとワサビが加わると、味の芸術」
洋子も、すぐに史の言うことがわかった。
「そうか・・・最後のワサビで、サーモンとキャビアの濃厚な感じを、締めるんだ」
奈津美、結衣、彩は目を閉じて味わっている。
とにかく話をして、口から美味がこぼれるのが、惜しいような表情。
次は
「プルーンとフォアグラをガランティーヌ、粒マスタードクリームを添え」
ここでも史
「まさかねえ・・・プルーンとフォアグラをガランティーヌ、アスピックも美味しい」
奈津美
「アスピックって、日本語で言うと煮こごりなんだけど、それも美味しいし、中身もすごいなあ」
結衣
「うーん・・・コッテリとしながら、どこか爽やかさと甘みがある」
洋子が、隣のテーブルにいる大旦那、奥様たちを見ると、本当にうれしそうな顔。
晃と美智子とも、楽しそうに話をしている。
「これも、マスターの料理の力かな、どんな人も幸せにさせる」
洋子が史に語りかけると、史はようやくニッコリと笑っている。
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