第429話母美智子の「お叱り」
史がステージを降りてくると、父晃と母美智子が、声をかけた。
晃
「史、災難だったな、大丈夫か?」
美智子は、史を叱った。
「どうしてトラブルが多いの!愛華ちゃんと加奈子ちゃんに失礼ですよ!」
史は、母美智子の「𠮟り」で、また顔を下に向けてしまう。
そんな美智子を奥様がなだめる。
「そんなことを言ったら、史君が可哀想すぎます」
「史君自身、何も悪いことをしていないのだから」
「加奈子も愛華ちゃんも、失礼なんて、何も思っていませんよ」
加奈子も、愛華も、奥様の言葉に頷いている。
加奈子
「史君は、堂々としていました、竜にも一歩も引きませんでした」
愛華
「私の方から、史君にお願いをしたことなので、私にも重い責任があるのですから」
ただ、なだめられても、美智子の顔は晴れない。
やはり「スンナリとなるべき」愛華と加奈子の音大見学でのトラブルを、問題視している。
また、史も母の言葉が重い。
顔を下に向けたままになっている。
そんな史に大旦那が声をかけた。
「史君、そう顔を下に向けるものではない」
「お母さんは、いろいろと心配が多いのさ」
「とにかく、何も悪いことをしていないのだから、胸を張りなさい」
史は、大旦那にそこまで言われて、ようやくその顔を上に向けた。
そして、父と母に
「ご心配おかけしました」
と、一言。
顔は、まだ暗い。
由紀のスマホが光った。
由紀がスマホを手に取ると、相手はマスターらしい。
マスター
「もしかして、美智子さんも史君を叱っている?」
由紀
「うん・・・史が、また暗くなった」
マスター
「全くなあ・・・さっき上の店に寄ったんだよ、美智子さんが妙に難しい顔しているからさ、史君を責めるかもって思ってさ」
由紀
「うーん・・・私も責めちゃったけど・・・」
と、困った顔になる。
マスターは話題を変えた。
「とりあえずさ、準備はできたから、店に戻ってくれ」
由紀
「ありがとう、じゃあ、戻るよ」
マスターは、もう一つ連絡があるらしい。
「それからさ、ついでだから、夜の部は8時まで貸し切りにした」
「昼の部の洋子さんたちも、ステーキ食べたいらしくてさ」
由紀は、そこで思いついた。
「じゃあ、史の隣は、洋子さんたちにお願い、親とか大旦那夫妻とか従姉たちは、私が対応する」
マスター
「ああ、それがいいかな、そう言っておく」
由紀
「私、これ以上、史の暗い顔見たくないの」
由紀は、少し涙ぐんでいる。
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