第381話音大訪問(5)レッスン室にて超朗報!
史と由紀は緊張気味に、榊原先生と内田先生と一緒にレッスン室に入った。
まず、史がキチンと頭を下げる。
「お招きいただき、ありがとうございます」
由紀も、付き添いなので、同じように頭を下げる。
史は言葉を続けた。
「それで、一応、ここの音大を志望しようかと思います」
「基本的にはピアノしかできないので、ピアノ科」
「それで、電話でも話をさせていただいたのですが、音楽史に興味がありまして」
史が、そこまで言葉を続けた時点で、内田先生が史の顔を見た。
内田先生は、少し笑いながら
「まあ、あまり気にすることはないよ」
「史君としては、演奏を本業にしないということを、悪いことと思っていない?」
「というか、それを私たちに話をすることについてなんだけど」
史にとっては図星だったようだ。
素直に頷いている。
榊原先生も話に入ってきた。
「史君ね、どっちにしろ音大に入れば実技もあるし、理論もある」
「今の段階で、そこまで決めつけることもない」
「音大に入ってから勉強を続けながら、もう一度自分で考える、あるいは他の人の意見も聞いて判断すればいいよ」
榊原先生は、おおらかな表情。
両先生の意見には、由紀も異を唱えない。
「史、私もそう思う、史の演奏スタイルが本当に仕事として成功するかどうかは、まだわからない」
「確かに今までは良かったけれどさ」
史も、そこで安心したらしい。
レッスン室に入る時の緊張した顔は、柔らかくなった。
「ありがとうございます」
「まだ先の話ですものね、先走りすぎました」
内田先生が史の顔をじっと見た。
「それでね、史君がここの音大を志望するということなら」
そこまで言って榊原の顔を見る。
榊原は、頷き、笑った。
「内田先生と僕で、推薦状を書くことになっている」
「だから、受験は心配ないよ」
それを聞いて、史は目を丸くした。
「え・・・それって・・・マジですか?書くことになっているって・・・意味が・・・」
「どうしてそこまで?大した実績もないのに」
とにかく信じられないらしい。
そんな史に、内田先生
「ああ、実はね、学長と主だった理事連中が史君の演奏会を二回とも聞いているの」
「私が連れてったんだけどさ」
「それで、学長を含めて理事連中全員が、推薦どころじゃないの、スカウトなの」
クスクスと笑いだしてしまった。
それを聞いた史は
「え・・・マジ?はぁ・・・」
と、ビックリ顔から、キョトン顔に変化した。
由紀は
「うむ・・・これはこれはラッキーだ、これで史の受験悩み顔を見なくていい」
「ますます仕事を押し付けよう」
よくわからないけれど、変なタクラミを考えている。
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