第369話披露宴二次会にて

マスターが京都のお屋敷の料理人たちを指導、そして美智子と涼子が参加した二次会は、新年会兼披露宴の時とは、打って変わったものになった。

スタイルとしては、ビュッフェになったけれど、とにかく出てくる料理が、いかにもマスター風。


瀬戸内海の魚介類を豪快に炊き込んだ特大パエリャ。

マスターの秘密のタレを使った大スペアリブ。

少し繊細な、舌平目のクルスタード

しっかりと焼き上げた小海老のグラタン

カフェ・ルミエールでも定番の、ステーキサンドイッチ。

京野菜を使ったシーザーサラダ。

歯ごたえも楽しい桜海老のスパゲッティ

・・・・

とにかくマスターたちは思いつく限り、いろんな料理を作ってしまう。


これには、大旦那も大満足。

「儀式は儀式でいいけれど、これもいいなあ、さすが佳宏だなあ、とにかく美味しい」

奥様も、大喜び。

「とにかく味がくっきりとして、パワフル」

そんな評判で、涼子はうれしそうな顔になる。

大旦那と奥様に頭を下げ

「これからもよろしくお願いします」

大旦那と奥様もにっこりと涼子に頭を下げている。


さて、史は珈琲や紅茶を淹れるのに、最初は忙しかったけれど、途中からテーブルに戻されてしまった。

それは、料理人たちや給仕の人たちが

「史坊ちゃまは、しっかり食べてください」

「もう少し肉をつけたほうがいいですよ」

と、無理やり食卓に押し戻されてしまった。


それを見た由紀は

「ほら、ノロマだから戻された」

となるけれど


加奈子は

「史君、珈琲淹れるのが、すごく丁寧」

「それに美味しい、豆の風味が生きている」

目を閉じて、珈琲をじっくりと味わっている。


愛華は史の紅茶に感激している。

「うわーーー・・・この紅茶、別格やなあ・・・」

「どうすれば、こんなに甘くできるんやろ・・・」

「うちが淹れるのと、全然違う」

そう思って、史に声をかけようとするのだけど、史は、なかなかつかまらない。


由紀

「ほら、大旦那に呼ばれた」

「次はマスターに決っている」

加奈子

「で、マスターと密談してるんだけど」

愛華

「とても、入り込めない・・・」

由紀

「いいよ、あんなアホ、放っといて、何よりパエリャ美味しいや」

加奈子

「うーん・・・マジでみんな美味しい」

そんなことを言いながら、由紀と加奈子も食べる専門に変化した。


その後、愛華は何度も「史へのアタックチャンス」を狙った。

しかし、足を踏み出そうとすると、何故か、史は大人から呼び出され、しかも長々と話し込んでしまう。


愛華は最後には涙目になったけれど、結局、史とはほとんど話ができなかった。

「これは別の機会を探さないとあかん」

「とにかく、史君の周りに人が多すぎるんや」

「・・・なんとか・・・考えないと・・・」

愛華は、いろいろ考えた。


そして、最後には

「絶対、なんとかする」

深く心に誓うのであった。


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