第368話史の将来談義

愛華から、思いがけない提案を受けた史は、

「そうか、そうすれば、歴史も勉強できるし、ヨーロッパにも行けるし、音楽も出来るんだ」

とにかく目が輝きだしている。


そんな史を見た加奈子

「ああ、その手があったねえ、史君は洋子さんに聞いたら、文も上手らしいからさ、本も出せるね」

「それにどうせなら、西洋音楽史だけでなくて、日本の和楽器とかも勉強してみたら?」

「このお屋敷とか、一族の中にはたくさん資料もあるから」

どうやら、加奈子も面白くなってきたらしい。

加奈子の顔も、キラキラ輝いている。


ただ、由紀は浮かない顔のまま。

「うーん・・・歴史はいいの、でもね」

「私が心配なのは、史が留学とか行って、外国に行っちゃうとか」

「それが心配なの、だって、史ってひ弱だしさ」

「帰ってこなかったらどうする?」

「そして仮に帰ってきてもさ、外国人の可愛い女の子を連れて帰ってくるとかさ」

どうやら、かなり先の話をしているようだ。


愛華は、史に尋ねた。

「英語は当然だけど、ドイツ語、フランス語、イタリア語、語学の勉強も必要になるね、そういうのも大変やね」


史は、まだ明るい顔のまま

「うん、それはやるしかないしさ、それで生きていくとなれば」

そして、由紀を見て

「姉貴は、変な心配しすぎ、まだそんな段階じゃないし」

「外国の女の子とか何とかの前に、やるべきことが山ほどある」

「だから、余計なこと言わないで」

史にしては、割りとピシャっと言い切ってしまう。


由紀は、ムッとして

「うるさい!このアホ!」

「簡単には、行かせない」

と言い返すけれど、


加奈子が口を挟んだ。

「なあ、由紀ちゃん、なんだかんだいうてな」

「史君がいなくなるとか、それが一番辛いんやろ?」

「正直に言わなあかん」

「それが、ケンカの原因や」

「でもな、史君の将来は、史君のものや」

「それこそ簡単には、姉さんかて、決められん」


さて、子供たちがそんな話をしていると、美智子と涼子が歩いてきた。

美智子

「これからマスターが何か料理を作りたいって、私も涼子さんも手伝う」

涼子

「マスターとしては、特製パエリャ作るって、それ以外にも作るから、きっとスゴイよ、おそらく横浜スタイルかなあ」

「お屋敷の料理人も全員参加するって」


晃も子供たちの前に来た。

「ああ、子供たちはお酒は飲めないけれど、お食事は一緒にとさ」

「史には紅茶と珈琲をお願い」


史は、ニッコリとして立ち上がった。

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