第308話由紀対策を考えるけれど・・・
マスターがフフッと笑っていると、洋子は目を丸くしてカウンターの前、史の後ろに歩いてきた。
奈津美がサッと席をあけると、洋子は「さも当然」のごとく、史の隣に座ってしまう。
また美幸も、「心得たもの」、さっとチーズのガレットとボルシチ風スープ、ロールパンを洋子の前に置く。
まず、チーズのガレットをひとかけらほうばった洋子は
「うん、良いチーズですね、これはシンプルにして美味しい」
と、素直にニッコリ。
ついで、ボルシチ風スープとロールパンに移る。
「ふむ、コクがありますね、さすがマスターの味、どこかさわやかさもある、パンもバターがしっかりで、いいお味」
と、ここまでは満足そうだ。
そんな洋子に、奈津美、結衣、彩の女子三人は、少しホッとする。
史は
「ごめんなさい、おなかが減っちゃって、先に食べちゃいました」
と、なかなか素直である。
マスターが洋子に
「だから、由紀ちゃんにバレるとさ、また史君がね」
と声をかけるけれど
洋子は、首を横に振る。
「無理・・・由紀ちゃん、感づいている」
そして史の顔を見た。
「ねえ、由紀ちゃんのご機嫌を取ったほうがいいよ」
「そうしないとさ」
洋子は、それ以上の話はしなかった。
「また史が由紀に叱られる」は、全員の「共通認識」になっている。
それを聞いた史
「うーん・・・なんか面倒・・・姉貴って、本当にうるさい」
ムッとした顔をする。
奈津美
「そうだね、厳しすぎるって思う時がある」
結衣
「いつも史君を怒っている」
彩
「ちょっと、怒り過ぎと思うこともある」
と、心配するけれど、あくまでも姉と弟のこと、口出しは難しい。
洋子も
「それは、史君のことを心配してくれているんだからさ」
とまでは言うけれど、その次が出ない。
黙っていたマスターが口を開いた。
「うん、わかった、俺が何とかする」
「ああ、心配しないでいい」
そう言って、今度はニヤッと笑う。
何か、考えがあるようだ。
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