第213話玉鬘講義(7)
晃は話を続けた。
「さて、光源氏としては、玉鬘の母の夕顔との一件を世に知られてはならない」
「そんなことが表沙汰になれば、玉鬘の父の頭の中将との関係もおかしくなる」
「それは政治的な混乱をもたらすし、誰にとっても好ましくないことが起こる」
「そんな理由をつけ、唯一事情を知る右近を介して、玉鬘を引き取ってしまうのです」
「夕顔との一件がなければ、引き取ることはないですし、証拠隠滅を貫かなければならない、ここに平安時代の大貴族の不遜な態度を見ることもできます」
晃はここで、一呼吸をして
「玉鬘としては、まるでよくわからないけれど、九州での不安な状況、京都に逃げ戻ってからの不安で貧乏な生活から、いきなり世をときめく光源氏が父親代わりとなってしまった」
「これが、ある意味シンデレラストーリーと言われる所以です」
「他の女君と比べると・・・」
「紫の上、明石の君、花散里、空蝉、末摘花も、源氏に救われた感じですね」
「ただ、一番ドラマチックなのは、やはり玉鬘と思います」
「その後は、光源氏の好き心や、数多の求婚相手に戸惑いながら、裳着の式でようやく実父に対面、長年の望みを果たします」
「その後は、光源氏の考えで、帝の寵愛を受けることもできる、宮中の内侍所の長になるところまで、出世するのですが、そこで髭黒大将に・・・」
晃がそこまで話をすると、由紀が晃に耳打ちをする。
晃も頷く。
「はい、何故、源氏に引き取られてしまってから順調な生活となり、宮中の内侍所の長となるまで出世した玉鬘が、ある意味悲劇といえるような髭黒のエジキになってしまったのか」
晃の講義は、ますます深まっていく。
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