第143話コンクールの打ち上げパーティー(4)

史の合唱部継続を求める合唱部員たちの声は、なかなか収まらない。

その声の大きさに、史は本当に困惑、ヘキエキ状態である。


さて、合唱部顧問岡村からのコンクール結果の連絡を受けた学園長と史のクラスの担任三輪もカフェ・ルミエールに入ってきた。

不思議なことに、地域の橋本自治会長も、花束を持ち一緒である。


「やあ、おめでとう!学園の誇りだよ」

学園長は、本当にうれしそうに岡村顧問と合唱部部長の由紀に握手をする。

三輪担任は、史に「おめでとう、史君」と言い、カウンターの前に座った。


「それで、これは地域の名誉でもあるので」

橋本自治会長も、本当に感激した様子、大きな花束を岡村顧問に渡し、また大拍手となる。


そんなセレモニーが続き、「合唱部継続要求」が一時収まった史は、キッチンで一服、

「はぁ・・・めんどくさい」

「まだインタヴューもあるし、家に帰って勉強もあるし」

けっこう、ブツブツが続く。


そんな史に奈津美が声をかける。

「ねえ、史君、大変なのはわかるよ」

「疲れたら、慰めるね」

「由紀ちゃんには言えないこともね、聞いてあげる」

結衣も声をかける。

「でも、頑張りすぎないでね、倒れられると心配」

彩も、史が心配で仕方がない。

「いろいろ、やると出来すぎちゃうんだよね、それで期待されて、頑張るけれど」

「まったく・・・史君だってオモチャじゃないんだから」


いろいろ「心配の言葉」をかけられ、少しホッコリ状態の史であったけれど、そんな状態は長くは続かない。


「史くーん!」

「ピアノ弾いて!」

「歌も歌って!」

「あ!インタヴューも!」

合唱部員たちの騒ぎ声は、キッチンに避難状態の史にも聞こえてくる。


「しょうがないなあ・・・」

史も、諦めたようだ。

少し頭を掻きながら、キッチンを出て、ピアノに向かい歩きだす。


その史は、突然、姉の由紀の前で立ち止まった。

由紀は

「?何?史」

となるけれど

史は

「うるさい!いいから!」

強引に由紀の手を握る。

そして、また強引に由紀を連れ、一緒にピアノに向かう。


「あ!わかった、あの二人」

母の美智子だけが、ニッコリとしている。

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