第141話コンクールの打ち上げパーティー(2)

カフェ・ルミエール店内の飾り付けは、奈津美や結衣、彩が里奈と協力して、華やかなものとなった。

史は、洋子と協力してフレッシュバターを作ったり、飲み物の準備をしたりで、結構忙しい。

そして、史には打ち上げパーティーとはまた別に、もう一つの仕事がある。

つまり、「本来の新聞部としての取材のまとめ」である。

それでも、今までの練習経過などは、きれいにまとめてあるので、後は当日のパンフレットを見たり、他校の演奏、審査員長の言葉についてまとめ、PCに打ち込む等の作業が必要となる。


「しかしなあ・・・ちょっと嫌だ」

史は、顔があまり浮かない。


洋子も少し気になった。

「何かあるの?取材し忘れたとか?」


史は首を横に振る。

「全てはちゃんと取材したし、打ち込むだけです」

まあ、メモ帳にも、本当に美しい字で書いてあるから、大丈夫だとは思うけど、史の顔は、まだ浮かない。


「いったいなあに?」

洋子が首を傾げていると、奈津美と結衣、彩が戻ってきた。

里奈も心配そうな様子。


それでも、奈津美は気づいたようだ。

「もしかして由紀ちゃん?インタヴューするんでしょ?部長だものね」

奈津美の指摘に史は頷く。


「うん、やだ、姉貴なんかの取材、すぐにポカポカするから」

史は、そんなことを言いながら、ムクレている。


これには洋子も呆れた。

「取材するのも部活でしょ?仕方ないじゃない」

奈津美も洋子に同調。

「大丈夫、由紀ちゃんが怒るのは、史君が心配だからだよ」

結衣も続いた。

「もし、また怒られたら、私が慰めるからさ」

彩も似たようなもの。

「うん、結衣ちゃんの次は私が慰める」


史は「え?マジ?何この人たち!」の表情である。


さて、里奈は、「そんなお姉さんたち」には付き合わない。

誰かと途中からずっと電話をしている。

電話が終わって、史に一言。


「あのね、お母様も来るって」

「お母様は、何かケーキを焼いたみたい」

「でもさ、史君もちゃんとお母様に電話しなかったの?」

「すごく心配していたけれど」

里奈は、ちょっと史を責めている。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る