第137話合唱コンクール(2)

合唱コンクール当日になった。

それでも部長の由紀は緊張している。

そのため、朝ご飯も食べるのが遅い。

「由紀?部長のあなたが緊張していてどうするの?」

母の美智子も呆れるほど。


一方、史はいつもと同じ。

「母さん、フレッシュバターにもう少し塩を入れたほうが、レタスの味が引き立つ」

まあ、細かい文句まで言うものだから、由紀は気に入らない。


「だったら、史が自分で作ればいいじゃない!」

「何?里奈ちゃんと話をする時間はあっても、フレッシュバターを作る時間はないの?呆れる!」

そんなことで、由紀は苛立っている。

ただ、苛立ちが結果的に良かったのか、その後はサンドイッチをバクバリバクリ。


それに呆れた史が

「ふん、姉貴の食べ方って品がない、だから彼氏もできない」


そんなことをいうものだから

由紀は「うるさい!このアホ!気にしていることを」で、史をポカリ、勢い余ってまたポカリ。

そんなことで、「いつもの朝食の風景」に戻っている。


朝食を終え、由紀と史が玄関を出ると、里奈が走ってきた。

「おはようございます!」

「史君、そして由紀さん!」

「私もコンクール見に行きます!」

里奈は有無を言わせず、史の手を握る。

そして、里奈と史はどんどん歩きだしてしまう。


「うーーー!気に入らない!」

「歩きながら、史の頭をポカポカしようと思ったのに!」

「それに何?『そして由紀さん』って・・・」

「私って、まるで付け足し?」

由紀は、またブンむくれるけれど、そんな由紀はともかく、母美智子がポツリ。


「ねえ、里奈ちゃんって、最近すごく可愛くなった」

「ああいう女の子がいいなあ」

「由紀と交換したいくらいだ」


由紀は、またしてもブンむくれてしまった。

とても、コンクール前の緊張どころではない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る