第134話マスターの歴史好き(3)

歴史好きな客も、ニコッと笑う。

「相争う女性たちも、その武器には一切の刃物がなく、傷つけるのは家財だけで」

「相手の女性には傷をつけないんですね」


マスターは、それに答えた。

「襲撃前に使者を派遣して日時を通告するとか、一定の破壊が終わると調停者が登場するのですからねえ・・・」

「まるで、スポーツとかゲームとかで」

マスターはクスっと笑う。


美幸は、まだ首を傾げている。

「今の時代なら、新しい奥さんの顔はもちろん、家まで押しかけるなんて、考えもしないけど」


マスターは美幸に答えた。

「ああ、根本的な動機としては、旧妻の新妻への復讐」

「それで破壊の対象が家財だけで、そこを破壊することが復讐と考えたんだろうね」

「その破壊行為でのストレス発散と交換に、旧夫と新妻の結婚を認めたのかな、そんな感じ」

「有名なのは道長の例とか、北条政子の例もあるけれど」


「え?」

と驚く美幸や、他の客にマスターが一言。

「ああ、これは、いつか別の機会に」

「資料も必要なので」


どうやら、マスターは歴史講義の機会を考えているようだ。


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