第126話史の音大見学(2)
史は、合唱部の岡村顧問とカフェ・ルミエール楽団の指揮者榊原に連れられて、調布の音楽大学に到着した。
音楽大学の構内に入ると、様々な楽器を抱えた学生が数多く歩いている。
またキャンパスでヴァイオリンやヴィオラ、フルートを吹いている学生が多い。
まさに、「音楽の森」のような雰囲気である。
「史君、ここは初めて?」
榊原が尋ねると
「いえ、ピアノの先生に連れられて、ここに来ました」
「中学生の頃、一度だけです、コンクールの直前だったかなあ」
ここの音大そのものは初めてではないようだ。
「それでね、ピアノ科の先生には連絡してあるんだ」
岡村は、史に言葉をかけてから、スマホで何か連絡をしている。
「ピアノ科の先生ですか・・・」
史にはまったく予想がつかない。
少し戸惑いながら校舎に入り、廊下を歩いていくと、榊原と岡村はさすがに有名人のようだ。
すれ違う学生や、講師だろうか、必ず頭を下げていく。
そして、その二人に連れられて歩く史にも、視線が浴びせられる。
少しずつ「ヒソヒソ話」も聞こえて来た。
「ねえ、あの男の子、どこかで見たことあるなあ」
「えーっと、何だろう・・・」
「それでも、あの榊原先生と岡村先生が連れてくるんだからねえ・・・」
「でさ・・・かなり美形だよ、あの男の子」
「へえ、でも子供みたいな感じ、高校でも一年生ぐらい?」
最初は、そんなヒソヒソ話だったけれど、途中から気づいた学生もあるらしい。
「ねえ!思い出した、あの男の子、去年のピアノコンクール中学生の部で都内一位の子だよ!」
「あ、私もあの時に聞いた、きれいな弾き方だよね」
「でも、全国大会では見なかったよ」
「ああ、それね、あの子インフルエンザで欠場したんだって」
「うわーーー・・・可哀想・・・・」
そんなヒソヒソ話を歩きながら聞こえてしまっているのか、史は困惑。
榊原と岡村は、ニヤリと笑っている。
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