第108話源氏物語談義(1)

今宵はカフェ・ルミエールに、史と由紀の父にして源氏物語研究者の晃が、馴染みの学者を連れて、源氏物語談義をする予定である。

まあそれには、パテシェの洋子、奈津美、アルバイトの結衣と彩も興味津々である。


「うん、今日は帰らないで聞く」洋子

「私も絶対に聞きます。ウキウキしてきちゃった」奈津美

「うん、でもあまり聞く人が多いとね、どうやって聞くの?」結衣

「学者さんたちのテーブルに、聞く人の椅子を置くの?邪魔にならない?」彩

・・・・・

様々、考えるけれど、なかなか結論は出ない。

それで、結局、マスターと涼子が、晃に連絡を取った。


「晃さん、申し訳ないけれど、カフェ・ルミエールのステージに席とマイクを設けるよ」

「店の従業員はともかくね、他のお客様も話を聞きたいかもしれないから」

「俺も実は聞きたいのさ、何とかならないかなあ」


晃は少し戸惑ったけれど、結局は承諾した。

「そうなると、パネルディスカッションみたいだね」

「今日の話は若菜上だから、少し長くなるかもしれません」

「ああ、でしたら資料も準備します」

さすがは、超一流の源氏学者である。

資料の準備までOKしてくれた。


「やった!お菓子何か作る!」洋子

「私も料理手伝います!」奈津美

「うん、マイク付きだからいいね、あ!張り紙しようよ、源氏物語特別シンポジウムって!」結衣

「うん、PC準備!」彩

様々、ウキウキの状態になるけれど、


涼子が呆れて一言

「あのね、そうやって騒いでいるけれど、しっかりと若菜上を読んだことあるの?」


「えっと・・・」洋子

他の奈津美も結衣も彩も、そう言われるとイマイチらしい。


マスターはクスッと笑い、説明を始めてしまった。


「あのね、若菜上はね、長い源氏物語の中でも、特別と言われる部分」

「まず、源氏の腹違いの兄の朱雀院が出家を志す、そして愛する娘にして、少し問題のある女三の宮を源氏に嫁がせようと希望する」

「源氏は、少し迷うけれど、様々考え、結局は承諾」

「翌年の正月、玉鬘による源氏の四十の賀」

「二月に女三の宮の源氏への降嫁」

「紫上は、心を押し殺して準備をするけれど、結局ストレスで胸の病に」

「翌年三月、源氏の娘明石の女御が男皇子を出産」

「そして・・・六条院の蹴鞠で、柏木が女三の宮をかいま見てしまう」

マスターは説明を一旦ここで止めた。


「・・・う・・・さすが旧華族系・・・」洋子

「あら・・・どうしよう・・・よくわからないで騒いじゃった」奈津美

「史君に本を紹介されたけど、もったいなくて、買ったけど、まだ読んでない」結衣

「うーーー私も論外だって・・・」彩

そんな状態の四人はともかく、

マスターは

「さあ、準備でもしようか」

「BGMは、どうするかなあ」

「史君と由紀ちゃんは・・・最近、仲が悪いからなあ」

いろいろ考えながら、動き出している。







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