第109話源氏物語談義(2)

午後6時半、晃とおそらく研究者仲間らしい、二人の学者がカフェ・ルミエールに入ってきた。

そのうち、一人は七十代の男性、もう一人は三十代の女性である。

晃から、マスターを始め、店員たちに紹介がある。

「この年輩の先生が、私の先生でもある、雛田先生」

「この若手の先生が、まあ、私の生徒でもあった、高橋先生」

それぞれ、さすが源氏研究者なのか、お辞儀ひとつに、どこか品がある。


マスターが店を代表して、ご挨拶。

「いや、なかなか聞ける話でもないので、無理を言ってしまいました」

「何しろ源氏の中でも、別格の若菜上のお話ですから、我慢ができなくて」

マスターが苦笑すると、三人の学者もつられて笑う。


「それでね、晃さん、ステージはあのように」

涼子が指し示すと、晃たち三人の学者がステージを見る。


「ほお・・・」雛田

「ご立派な・・・ひな壇、マイクまで」高橋

「それで、あれは?」

晃が天井を見ると、何かスクリーンのようなもの。


「はい、スクリーンも使えます」

「パソコン画面の拡大も出来ますよ」

マスターが説明をすると、晃は少し考えた。

そしてマスターに

「そうなると、私たちは話をしながらの、PCの操作は難しいので」

「史を呼びますよ・・・由紀よりは史のほうが使いやすい、源氏もよく読んでいるし」

晃は、史を手伝いにさせたいらしい。


「・・・それはいいですけれど・・・」

マスター以下、涼子、洋子も不安な様子。


晃も感じ取ったらしい。

「ああ、由紀のことですか?」

「最近、仲が悪いとか?」

「呼ばれなくてすねるとか?」

そして、クスッと笑う。


「そうなんです、一緒に呼んだほうが・・・」

マスターも、苦笑いをしている。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る