第107話史の合唱部取材(4)(完)

「え?何?あなたたち?」

由紀は、他の合唱部員が「史にお願いがある」なんてことは、何も聞いていなかった。

少し戸惑っていると

「あのね、史君!コンクールでピアノ弾いてくれないかな!」

「私たち、史君のピアノで歌いたいの」

由紀にも、「当の史」にも、全く考えもしていない「お願い」である。


「・・・あ・・・それはちょっと・・・取材もできなくなるし・・・」史

「今から急に練習参加なんて無理」由紀

珍しいことに意見が一致する史と由紀であるけれど、他の合唱部員の拍手が始まってしまった。


「えーーーーどうしよう・・・」史

「うーーーん・・・やだーーー史と練習なんて・・・」由紀

「僕だって嫌、学園でも家でも、姉貴と一緒なんて」史

・・・・

いろいろ小声でやりあうけれど、拍手はなりやまない。

二人がためらっていると、音楽室の扉が開いた。

その扉から、山本学園長、三輪担任、元オペラ歌手で合唱部指導者となった岡村が入ってきた。


「ああ、史君しだいだよ、でもぜひ出てもらいたいなあ」岡村

「取材の方は、取材として出来ると思うよ、出てみたら?」三輪担任

「学園長としても期待します」山本学園長


「・・・これって、姉貴の策略?」史

「アホ!そんなことするわけないでしょ!」

由紀は史の頭をポカリ。

しかし、そんなことを二人でやっている状況ではない。



「わかりました、今回限りで」

史も、逃げようがなかった。

そして史は、またしても拍手と「史くーん!」という女生徒の歓声に包まれる。


「ああ!このアホの史!家に帰ってピアノをシゴクから」

由紀も仕方がなかった。


ということで、ピアノ伴奏として、史の合唱コンクール出場が決まった。


史の合唱部取材は、史と由紀にとって思いもよらない「宿題」を抱えることになったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る