第99話カフェ・ルミエールの新メニュー(5)
由紀は父の晃の帰りを待つことにした。
何しろ、母の美智子は料理にしろお菓子にしろ、史の意見しか聞かない。
由紀が何かを言っても、
母美智子は
「由紀の意見は、大雑把なの、だから参考にはしても、使えない」
「史は、几帳面に指摘してくれるから、そのほうが直しやすい」
おまけに、ますます由紀にとって気に入らないことまで言う。
「一緒に料理していても、史のほうが頼れるの」
「味覚はしっかりしているし、手先も器用」
最後に
「由紀よりはね」
「私だってね!あんたの娘!」と怒りたいけれど、母に相手にされないことには仕方がない。
由紀が時々、史に怒りを浴びせるのも、ある意味、母美智子からの「気に入らない仕打ち」への、憂さ晴らしなのである。
・・・それでも、子供の頃は、史がすぐに泣くから、焦った。
「ごめん、史・・・ごめん」
抱きかかえて謝ったこともあるけれど、最近は史も強くなって泣かなくなった。
それに、まあ気に入らないけれど学園内からカフェ・ルミエールまで女どもにモテモテだ。
「ふん!女で失敗しても、可哀想っていってあげない」
「あのアホの母美智子で、よくお父さん我慢しているなあ」
「父さんだけだよ、全員に冷静に意見出来る人は」
「私にもキツイ時あるけど、筋が通っているから、納得できる」
「困ったときに父さんの意見で動くと、必ず解決する」
「アホの母美智子は、あてにしないし、されてもいないし」
「史なんかは、まだまだガキさ、もう可愛いなんて言ってあげない」
・・・・様々、ブツクサいいながら、由紀は父晃の帰りを待つ。
「ガチャ」
玄関のドアの音がした。
「あ!父さんだ!」
由紀は、やっと元気顔、玄関まで飛び出していく。
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