第83話カフェ・ルミエール楽団コンサート(5)
モーツァルト演奏の後は、客が全員立ち上がって拍手。
史は、顔を真っ赤にして、お辞儀をする。
「こうなるとねえ・・・」
榊原は腕を組んだ。
「モーツァルトも捨てがたいなあ」
「史君としては、ブラームスかベートーヴェンか」
モーツァルトを聴いてしまったばかりに、かえって悩んでしまう。
そんな榊原にマスターが声をかけた。
「ああ、下のホールでは、ベートーヴェンまでは出来るかなあ」
「詰めれば400人ぐらいは入れる」
「ピアノはスタインウェイだし」
そうなると、話が速やかである。
「とにかく響かせてみましょう」
史は、突然積極的になった。
その手には、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルト第五番「皇帝」の楽譜を持っている。
そして、マスターに、チョコンと頭を下げ、地下のホールに向かうようだ。
「う・・・史君の皇帝か、聴きたいなあ」
「しかし、店始まっちゃうなあ」
マスターは結局渋い顔。
「はーい、代役で聴いてきますね!」洋子
「うん、コンサートには親方も呼ぶかな」奈津美
「そう、私も友達全員に声をかける!」結衣
「スマホで録音しちゃおうっと」彩
既にカフェ・ルミエールの喫茶部は終了時間。
四人のスタッフは、心置きなく聴くことができるのである。
ただ、由紀だけは、少し心配な顔をしている。
「群がる女どもはともかく・・・」
「あの軟弱史に、皇帝なんか弾けるわけがないって・・・」
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