第65話マカロン(4)

洋子のマカロン講義は、そこまでだった。

カトリーヌ・ドゥ・メディシスの生涯そのものが、波乱に満ちあふれすぎていることもあり、華やかなマカロン・パーティーには似つかわしくないと思ったのである。


「まあ、単にお菓子一つと言ってもね、様々な歴史を秘めていることがあるの」

「でもね、それを考えすぎてはいけない」

「まずは、お菓子そのものを楽しまないとね」

やっと、洋子は少し笑った。

それで、翔、香奈、奈津美の顔もホッとした。


「もう一度、中世史の本を読むかな」翔

「私の家にたくさんあるよ」香奈

「あら、それはそれは・・・」

和菓子職人でもある奈津美も興味があるようだ。

そして、何かを思いついたのか、洋子の顔を見た。


「ねえ、洋子さん、こういう話をね」

奈津美が声をかけると


洋子も気づいたらしい。

「ああ、広報誌とかホームページに?」


「うん、そうするとね・・・史君がね」

奈津美は、含み笑いをしている。


「え?そうかあ・・・それは名案だ!」

洋子は、ニンマリ、その上、顔が赤くなった。


ただ、翔と香奈には、その変化の意味がわからない。

「え?何ですか?広報誌とかホームページって?」翔

「まさか、このカフェ・ルミエールで?」香奈


奈津美が応えた。

「超名文家にして、超美少年記者がいるの」

「みんな、トロンとするくらい」

「その子がつくるんだけど」


洋子は、ますますニンマリ。

「そうか、史君の世界史の勉強にもなるなあ」

「これは、一挙両得だ、シメシメだ」

「瓢箪から駒だ」



翔と香奈は、あっけに取られて、店を後にした。


「このカフェ・ルミエールって、底が知れない」翔

「私も、その史君を見てみたいなあ」香奈

「おいおい・・・」翔

「嫉妬は無用、もう史君って子はね、彼女がいるんだって、奈津美ちゃんがこっそり教えてくれた」香奈

「でも、興味はあるな、一度見てみたい」翔

「そうだね、面白いかも」香奈


・・・まさか、翔と香奈が、史に取り込まれることはないだろうけれど・・・

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