第51話涼子の後任(2)

涼子の後任を選定するべく、さっそく次の夜に、カフェ・ルミエールで、女性たちの会議が始まった。

もちろんメンバーとしては、当の涼子、洋子、ひとみ、奈津美、史の母の美智子も参加している。


「接客対応が上手で、マスターの意思をパッとつかむ人」洋子

「ある程度、経験者で、マスターの知り合いの人?」奈津美

「ホテルのバーとかにいた人のほうが、マスターには合うかなあ」美智子

「私が夜だけやってもいいんだけど、朝が早いからね、お菓子屋は」ひとみ

「うん、ひとみちゃん、無理はしないで」涼子

なかなか、話は難しいようだ。


「今、現場で働いているのを引き抜くのも、何かと問題がある」洋子

「この世界は仁義があるからね、一時的には私のように修行ならいいけれど」奈津美

「私も若かったら手伝うけれど・・・それに史君がイマイチ心配でねえ・・」美智子

「うん、可愛いけれど、確かに危なっかしい」涼子

「そうなると、学生さんのバイト?」ひとみ


「それしかないかなあ、当面は・・・料理学校の後輩かな」

洋子は腕を組んだ。

「問題は接客対応ですね、料理は大丈夫な料理学校の学生だからいいけれど」

美智子は、少し不安な様子。

「でも、上手に仕込めば、若い客層も増えるかなあ」

涼子は、少し笑った。

「そうですね、特に夜は年輩の方が多いですし」

奈津美も頷いている。


「・・・で、男の子にするの?女の子にするの?」

洋子は、涼子の顔を見た。

涼子は、少し考えた。


「・・・両方でいいかな」

「二人仕込んでおけば、あとあと便利だと思う」

「この店にも、その二人にも」

涼子は、考えを決めたようだ。

他の女性たちからも、異論の声はない。



「じゃあ、だいたいこれでいいかな、今日のところは」

美智子も安心したようである。

席を立って帰ろうとする。


しかし、洋子がそれをとどめた。

「史君が心配なの?大丈夫だよ」

「もう少し話そうよ、別の話題でさ」

洋子は少し笑っている。


「うん、もう少し残っていたら?」

「母親は邪魔かもしれませんよ」

奈津美も笑っている。


「意味わからないよ」

美智子は首を傾げている。


「だってさ、史君には、里奈ちゃんが、猛アタック中だし」

「史君も、マンザラではないみたい」

「由紀ちゃんから聞いたんだけどね」

涼子は、含み笑いをしている。


「えーーーー!マジ?ますます危ないって!」

美智子は、メチャクチャ焦った。

顔に動揺がはっきりと浮かんでいる。




「まあ、知らぬは母親ばかりってね」

カウンターの奥で、マスターが、ニヤッと一言つぶやいた。



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