第6話絶品サンドイッチ
今日のカフェ・ルミエールは、開店初日で繁忙を極めた昨日と異なり、少しは落ち着いている。
それでも、開店前から行列が出来、開店と同時にカウンター席もテーブル席もほぼ満席、順調な滑り出しと言っていい。
「さて、昨日は入れなかったけれど」
噂を聞きつけていたのだろうか、午前9時の店内に、おそらく近所の主婦とみられる4人が入ってきた。
「うーん・・・確かに超有名なパテシィエさんのケーキも捨てがたいけれど」
「私、誰かに聞いたんだけど、サンドイッチも絶品らしいよ」
「それにして見る?ケーキは美味しくて当たり前だけどさ」
「そういう私たちでも作れるサンドイッチで、本当の実力がわかる」
そんな話がまとまり、パテシィエ洋子に、サンドイッチと紅茶の注文を出すことになった。
「はい、承りました、玉子サンド、ハムサンド、苺ジャムサンド、マーマレードサンドですね」
アルバイト店員の結衣がにっこりと笑い、洋子に伝えている。
「まあ、あのマスターが選んだ人だし、問題はないと思うけど」
「いやいや、食べてみてガッカリって店も多いよ」
「近所の私たちに馴染めないとねえ、いくら若くて美人で有名なパテシィエでもさ」
「でもさ・・・すっごくパンのいい香りがしてきたよ」
「はい、お待たせしました、ご注文のサンドイッチと紅茶でございます」結
そんな話をしていた、主婦4人のテーブルに注文のサンドイッチが、それぞれ置かれた。
「さて・・・紅茶はアッサムかなあ・・・香りからして、上質なのはわかる」
「うん、茶葉の開き方から、甘味から絶品だ」
「カップもソーサーも花柄でジバンシー?」
「ふう・・・丁寧に・・・ここまで自分じゃ出来ないなあ・・・」
まずは、紅茶で大満足したらしい。
そして、次はサンドイッチへの「ほぼテスト」になる。
「さて・・・サンドと・・・」
「うん、しっかり味見だ」
「厳しめでいいかな」
「ゴチャゴチャ言わない、食べる!」
そして食べ始めると
「え・・・このパン・・・え?玉子?」
「パンもハムも超美味しいんだけど、塗ってあるバターが半端じゃない!」
「パンも美味しすぎ、え?すっごい、このジャム・・・」
「ほんと美味しいパンだねえ、それに・・・うわー・・・なんて上品で爽やかなマーマレードなの?」
サンドイッチでは「テスト」どころか、大感激である。
そんな主婦4人組のところに、洋子が挨拶に来た。
「はい、いらっしゃいませ、サンドイッチはお口に合いましたでしょうか?」
にこやかに微笑んでいる。
「いやーーー美味しいなんてものじゃなくて・・・パンもすごいですねえ・・・」
「パンもすごいけれど、あの・・・ハムも、バターもフレッシュで!」
「パンもジャムも本当に美味しい!」
「私もパンはすごいって思ったけれど、マーマレードはどうしたらあれほど?」
主婦4人組は、本当に美味しかったらしい、作り方に興味を持つものもいるようである。
「はい、パンにつきましては、全てこの店で焼いております」
「バターもこの店で作ったフレッシュバターです」
「それから、玉子とか野菜は、全て地域の農家さんから分けてもらっています」
「それでね・・・」
洋子は少し腰をかがめ、主婦4人組に耳打ち。
「苺ジャムの苺と、マーマレードのミカンも地域の農家さんですが・・・」
「フレッシュバターをを含めて作ってくれたのは・・・史君と史君のお母さんです」
「え・・・何か凄すぎ・・・それで味が濃くて新鮮なんだ・・・」
「いやーー!毎日通う!」
「史君を食べちゃったみたいだ・・・」
「顔が赤くなっているし・・・でも史君のお母さんってマジ?」
主婦4人組の反応に、洋子はニッコリと笑っている。
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