anxiety (不安)
一番最初は、トイレを掃除してるときだった。床に落ちていた髪の毛。私よりも、もちろん彼よりも長い、少し赤い色。
見つけたとき、しばらく固まった。つまみあげて、よく見るまでに5分ほどかかるくらい。えっと・・・。簡単に出てくる答えは、絶対に認めたくないことだから一生懸命考える。
そうだ!ヘビメタの友達!彼はミュージシャンだから、ジャンルは違ってもヘビメタの友達がいても、なあんにもおかしくないよ。きっとこの間、私が掃除したあとにヘビメタの友達が来たんだ。
答えがでるとほっとした。また掃除が続けられた。そしていつかそのことを忘れることができた。あなたは相変わらず優しいし、眼鏡を隠す幼稚な私を楽しんでくれてる。トイレを掃除して、花を飾ったことも褒めてくれた。5歳も年上だからきっと幼稚なことに付き合うの疲れるときもあるかもしれないのに、絶対そんなこと言わない。
だから、リムーバーを見つけたときも、そんなに慌てなかったはず。洗面所のシェービングクリームの横にあった見慣れない小さな瓶。100均で売ってるリムーバー。なぜ男性の一人暮らしの彼の部屋にそんなものがあるのかって、最初は思ったけど。
だから、考えた。洗面所のお水出しっぱなしのまま。
きっと酔っぱらってどこかのお店で小指にマニキュア塗ったんでしょ。それであわてて。
もしかしたら、ライブの時につけてみたのかもしれない。
そうだ!前にレガート奏法で弾くときは爪が割れるって言ってた。私が知らないだけで透明なマニキュアで爪をガードしてるんだね!そうか、そうか。100均の悪くないのかな?今度、私が使ってる爪に優しいの持ってこよう。教えてあげよう。
あれから鞄の中にはいつも持ってる、リムーバー。でもそのこと言うタイミング逃してる。だって『爪割れた。』ってバンドエイドしてたから。洗面所の小瓶は、いつの間にかなくなっているし。使い切ったのかな?早すぎるね。ああ、倒してこぼれたんだ。きっと。だから捨てたんだね、瓶。
私たちの時間は平和に流れる。あなたの割れた爪が治るころ、きっと私はリムーバーを見たことを忘れてる。
私たちの時間は今日も平和に流れる。未来も。
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