Loveing Red = 0.1の風景 =

moco

彼の眼鏡

 シャワーの音が響いてもうすぐ15分。もうすぐ出てくる。私はそっと脱衣所に行って、バスタオルの上にある眼鏡を取ってきた。

 ベッドの上に戻ると、開いていた雑誌を読むふりをする。もうすぐ、もうすぐ。シャワーの音が止まった。彼はもうわかっている。いつものことだから。最近はシャワーの途中何度か確認してる。だからギリギリに取りに行くんだ。

 出てきた。目を細めて、見えない焦点を合わせながら、バスタオルを首にかけて。

『返しなさい。』

って、目を細めたままベッドに近づいてくる。人相悪い。でもその顔が好きなの。

 私だけに見せてくれる顔。だっていつも外ではコンタクトだもんね。部屋ではだいたい眼鏡。眼鏡のあなたを知ってる人も多くないとは思うけど、それはきっと私だけじゃないから。0.1の裸眼で、そうやって焦点を合わせている顔を知ってるのは、きっと私だけだよね?今は。


 付き合いだして1年くらい。お泊りをするようになって半年。合鍵ももらって、今は掃除したりもしてる。これからどうなるかなんてわからないけど、今、幸せだからいい。

 でも、ちょっと気になることがないわけじゃない。

私でいいのかな?本当に。

『やっぱダメだワ』

って言われたら死にたくなるくらい、私はあなたが大好きだけど。あなたがどんなに人気者かは知ってるし。それに。

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