第12話『エンゲージ』
まず有効範囲内の減装炸薬弾頭の爆圧は、地面と電磁障壁で上方と左右に弾ききる。
土と石と破片か何かを一絡げ、鎧袖一触に電磁障壁で吹き散らす。
次に遠慮無く直撃する・・・これらは各種妨害弾頭である。
至近で炸裂するとともに、機体がピンクで黄色でキラキラしてネットリとする粒子と破片に包まれて全部混じりの虹色の塊と化す。
「・・・これは弾かない方が良いか」
電磁障壁の流体制御を変更、機体周囲に巻き込む形に・・・まあ数秒も持てばいいいが。
「え~、対空ミサイル圏内突破、実弾・プラズマ・粒子砲・レーザー圏内・・・防衛圏まっただ中で、強行索敵開始する」
本来は突撃した後、磁障壁の無い状態でセンサーを開放する。
が、現状そんなことをすれば即大破するので、仕方なくEBP(無極性分子:電磁障壁に反応しない)製の鞘に入ったメイン・サブ集合センサーを電磁障壁にぶっ刺して、無理やり外部に展開する。
「センサー展開・・・してくれよ、っと」
障壁の外で集合センサーが、華の如くに開いてゆく。
ぎこちなく、健気にサヤが割れると、全周囲・対地中・レーザー・光学・磁場等のセンサーユニット、大小四本が前後左右に・・・折れたり、伸展しない奴もあるが・・・なんとか展張した。
幾重にも電磁シールド(電磁波対策のこと:電磁障壁のことではない)が施してあるが、それでも障壁作動中の使用はノイズが酷い。
障壁の電磁ノイズだけならキャンセルもできるが、何かが接触するたび(それが粉塵でも)新たなノイズが弾けて精度は下がる。
「ふぉー!」
センサー本体はダメージで損傷、センサー感度も障壁の電磁場でバカになっている。
仕方なくセンサー感度を出力で無理やり補う。
「融合炉オーバードライブ! レーダー発振クソ出力。センサー・機体維持・制御系以外、電力カット」
武装維持管理系も諦める。大した電力の余剰は見込めないが、どうせ碌な武装はない。
超電導コンデンサをセンシングラインに迂回接続、電源共有により電磁障壁維持限界が減少、残り15秒。
増大していたセンサー出力が更に上る。
「瞬間出力なら、戦艦だって突き破るぜ!」
嘘である。
が、比喩でも何でもなく周囲の空気が沸騰、纏わりついた各種散乱幕も、高出力のレーダー発振に負けて蒸発してゆく。
出力はレッドゾーン。だが計器上のレッドゾーンではない。
第8152部隊強襲索敵機一門に伝わる、発振装置の素材から計算して弾き出された、各材質限界ギリギリ(ちょっとしたらアウト)のレッドゾーンである!
パワーは最大、発振機の余命は十数秒も持たず。
あとは燃えて尽きる。
偵察機の挟持、生きてる観測機器は、周囲のデータを次から次へ拾い、ポッドと電波で放り投げる。
「・・・・・・電磁波出しまくって敵からも丸見えになるのが、まあマジでヤバイが・・・。撃墜まで何秒持つかね・・・」
まずはこの丘の地中の構造物を探る。
対地中レーダー、地表を焼いて染み入る位相変調地中レーダー(アースライト)で地中を照らして大雑把に・・・本来はもっと正確に見えるが、レーダーが大出力過ぎて反射を処理し辛い・・・地下の様子を映し出す。
その情報処理に容量を多く割いたシステムが、
「ちょっと待てぇ!?」
光学・電波・レーザー探査全てが直近で反応。
丘が開く。目前でも一線の筋が口を開く。
知覚範囲内でも10を下らない数の隠蔽されていた機体用ハッチが開き、二脚・四脚の中近接型、中装の前衛機が発進する所を眼前で捉えた。
「それはいいんだが」
目前のハッチは・・・・・・激突コースである。
「マジかよ・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます