第5.5章 魔法幼女⑤
それが何話だったかは今でもすぐに思い出せる。
当時のあたしはこの回を見てからすぐにおもちゃ屋さんに連れてくように親にせがみ、その杖を模したおもちゃや変身後の格好を模した女児サイズの衣装を着てなりきっていたし、彼の家で使い方を覚えて間もないブルーレイで過去回含めて全話を年に一回は見ていたりもした。
小学校は彼とは違うところに入った。
こんな痛々しい自分を見せるのは恥ずかしいという感情があったからだ。
その彼の目が届かない六年間で、あたしのいわゆるオタク度はますますヒートアップした。
あたしのことを溺愛してるクソ親父に出費してもらって、この作品のイベントに参加したりゲームを買ってプレイしたりして、作品に対する愛情が日々右肩上がりで急激に上昇していった。
中学に入ると、あたしのオタク的な欲求はあるものを求めた。
コスプレだ。
あたしも昔は売られている衣装を着て満足していたけど、この頃になるとそれもより完璧を求めるようになっていった。
体型を寄せるためにダイエットして、顔の印象を寄せるためにメイクの練習もした。
ネックだったのは髪色だったけど、校則でそこはとやかく言われない私服可の中学に進学したので関係なし。
十二年の人生で一度も切らなかった髪を大胆にピンクに染め上げ、多めに束ねてふっくらした曲がりのツインテールにした。
ダイエットのために少食にしたり、日光に当たらないように生活していたから肌の色は白くなり、メイク込みで見た目の印象はだいぶ似てきたいた。
最初こそ貧血で倒れそうになったけど、あまり白くなり過ぎないように適度に運動して日にあたるようにはしている。
これで見た目の大部分はよせることが出来た。
最後の関門は胸。
Aではないがあたしはそこまでトップバストがなく、多少寄せてあげた程度ではあまりあるようには見えなかった。
そこで解決策として考えたのが白滝。
原料はこんにゃくと同じだけど、塊のこんにゃくと違って白滝は糸状でどんな形にも後から成型できるのが一つ。
そのこんにゃくと同じ弾力を持つ白滝は、ヌーブラなんかに使われるシリコンと弾力が似てるのが一つ。
そして何より食品だから基本的にどこででも買えて安あがりで、使い捨てではあるけどどこかに置いておいて埃をかぶるなんてことがないのも一つだ。
水を切った白滝を二重のビニール袋に詰めて結露を抑え、少し空気を入れて縛った後に多少形を整えて、ブラと胸の間に入れて下から持ち上げるようにしてみた。
すると服の上から触っても違和感が感じられなかった。
あとはこれを試行錯誤して、ブラのサイズと白滝の量を調整すればいくらでもごまかしは聞きそうだけど、あたしがやりたいキャラはそんなに大きくないのでしない。
最初は髪色こそそのままにメイクせずに中学に通って、休みの日にいわゆる宅コスをして楽しんでいたけど、ある日間違えてメイクして通学しちゃったことがあった。
でも特に気づかれた様子もなかったため、その日を境にほぼ毎日メイクをしてから通うようになった。
ある日、転校生がやってくると担任が言った。
期待せずに頬杖をついて見ていたあたしは、彼が名乗った名前を聞いて机に顎を打ち付けそうになった。
「転校生の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます