第6章 学園生活の始まり①
波乱の入学試験から、早くも二ヶ月が過ぎようとしていた。
四月、この日アーバン学園では入学式が行われていた。
学校の敷地の北側には四階建ての複合施設があり、一階は温水プール、二階は半分が畳張りの武道場、そして三階が体育館となっている。
温水プールは50メートルのコースが八つ設けられ、もう一つ同じサイズのプールが壁の反対側にあり、こちらは自由に遊泳できるようになっている。
武道場は畳のあるなしで半分に分けられ、畳がある方は主に柔道で使われる。
逆に畳がない方は、剣道や空手などで使われることが多いらしい。
三階の体育館部分は、バスケットボールコートを横に三つ並べてあるほど広く、それぞれをネットで仕切れば同時に三ゲーム行うこともできそうだ。
四階部分は体育館を見下ろすように一周している展望スペースになっていて、二・三人が横に並んで歩いても道幅には余裕がありそうだ。
入学式はこの体育館で行われた。
僕たち一年生はクラスごとに縦列に並び、中でも僕のクラスは全体の中心付近で縦一列に並んでいた。
並びは岩島君が先頭で、六無斎君が最後尾。
おそらく僕らの担任であろう先生が、ここに移動してくる前に、
「入場するときの順番は特に決めてねーから。好きに並びな」
と言ったので、背比べしてどっちが高い論争する前に、全員の名前を把握している僕が提案して前からあいうえお順に並んでもらった。
ちなみにこの並びで行くと僕は前から五番目。
前は波止場町さんで、後ろは雛森さんだ。
左右を見ると、いろんな髪型や髪色の人がいたり、例えば胸元を開けていたり、ネクタイを緩めていたり、十六夜さんみたいにもう制服を魔改造している人もいる。
あんな風にして【変身】能力を使ったときに変な風にならないのかなあと少し心配にはなる。
なにせ僕ら十人以外はみんな、全国にあるアーバン学園の附属中学からエスカレーター進学をした人たちばかりなのだ。
進学生の八割以上の人がすでに【変身】能力を解放しているらしい。
それに比べて外部進学クラスである僕たちは、僕と岩島君、そして炎条君の三人だけだ。
しかも、いつから使えたかは知らないけどだいぶ使いこなしてる(様に見える)炎条君はともかく、僕と岩島君はつい最近になって偶発的に目覚めたばかりなので、まだあまり慣れていないところがある。
それでも僕は、入学試験の時に意識して使ってはみたものの、痛みも傷もないとはいえただ敵のサンドバッグになるだけでしかないというのが、思いのほか精神的に傷ついた。
だけどそれ以上に問題なのは、岩島君の【変身】。
僕も春休み中に保健室で天野橋先生の話を聞くまで、まさかこんなオチが待っていたなんて、予想だにしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます