第5.5章 魔法幼女①

 ○がつ×にち かるねぁみ

 きょうはょぅちぇんのにゅぅえんしきです。

 ぉとぅさんといっしょにいきます。

 おとぅさんはなきむしさんなのですこししんぱぃです。

 ぉかあさんはおとぅさんのかわりにぉしごとするからぃけないみたぃ。

 ぉともだちがたくさんできたらぅれしいな。


 表紙がピンク色で、女の子向けのキャラクターが中心に描かれた、『にっき』と大きく書かれた薄いノート。

 その一ページ目にある幼いころに自分で書いた日記を見て、あたしは耐え切れずに笑ってしまった。

 大文字と小文字の区別がついていないバラバラで殴り書きのひらがな。

 クレヨンをジグザグに動かして描いただけの、雑な自分と親父の絵。

 赤色で丸を書いて塗りつぶしてピカピカしてることを意味する線を書いている太陽も、傾いているために実際に建っていたら人も住めないような見た目の幼稚園も、物心ついて間もないころのあたしが描いたものだ。


 この頃のあたしは、自分で言うのも恥ずかしいがあまり人前では喋らない大人しい性格をしていた、と思う。

 曖昧なのは、後になって現れたアイツの印象が脳裏に焼き付いていて、それよりも前の記憶が思い出しにくくなってしまったからだ。

 大人しいことでいじめられることはさすがになかったけど、印象が悪かったとは感じていた。

 その原因はうちのクソ親父にある。


 まず昔から親父は、あたしに対して過保護の度が過ぎていて、普段の時間でもこっそりのぞきに来ては警備員さんに見つかって不審者扱いを受けて、それこそドロケイをいい大人が大真面目にやっているようなもんだった。

 また、授業参観のように親が幼稚園を訪れてくるようなときは、必ずといっていいほどあたしがいるグループに割り込んでくる。

 その時のテーマに合わせて話題は変わるけど、あらかじめ知っていたように自然に混ざってくるものだから、あたしはだんだんと口ごもるようになった。

 だからみんなと話さなかったのではなく、話せなかったといった方が正しい。


 できることならみんなといっぱい話したかった。もちろんクソ親父のいない環境で。


 そんな時、空き家だった実家の裏の家に引っ越してくる家族がいた。

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