友達
ゼミ飲みの帰り、透と歩く。
「旬ちゃんがこの俺に恋愛相談とはなあ、こ、の、お、れ、に!」
「うっさい。」
ずっとバカでダメで、承認欲求の塊で。俺の言葉なんて伝わらないと思ってた透が
「お前、世界を見下しすぎやろ。」と話しかけてきたあの日から。
俺たちの関係は少しだけ近くなった。
「でもまたなんで年上よ。年上無理って言っとったやん。」
「なんか脆さ?って言うんかな。見ててほっとけんくなる。」
俺の好きな人、バイト先の職員の奈央さん。
奈央さんは大人だ。仕事もできるし、こんな俺の話に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれる。
でも、その笑顔の奥に、切なさとか儚さとか、語彙力のない俺には表現できない何かがあって。
「好きなら付き合えば。」
「こんなガキに付き合ってくれるとしたらそれはもはや同情やろ。」
一緒に働くようになって、好きになりかけたとき、
こんな俺に構ってる暇はないだろーって、強がりついでに嘘をついた。「彼女居るの?」「まあ、一応。」
「旬のことやし、我慢できんなって彼女いませんって言ってしまうやろなー。」
「それはまじ笑えん。」
春から県外就職の俺。奈央さんの大事な未来を俺に付き合わせるわけには、いかないよなあ。
「なんか俺って、傷付くの怖がっとるだけでめちゃくちゃダサい気がしてきた。」
透が、恋には不安が付き物やもんなあ??と嫌みたらしく笑う。くっそー、バカにしやがって。と思いながら、別に嫌じゃない俺も、俺。
「どんなに傷ついて泣いても、俺が近くにおるやん?」
冗談なのか本気なのか読めない顔で、透がバシバシ俺の背中を叩く。
失恋しても、一人じゃないって強え。
「透ー。」
「なに。」
「二軒目おごる。」
「おー。それはラッキー。」
春からまたこいつと同じ職場か。
(最高に心強いよなあ。)
「今、俺が居て心強いと思ったやろ?」
「お前バカなん?」
伝わらないと飲み込んだ言葉も今は。
きっと伝わっているから、かわりに目一杯笑った。
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