とにかく規則正しい人。そんな理想をあちらこちらに振り撒いていた。

当時付き合っていた秀平は。とてもいい人だったけれど働き方が私の時間と合わず。

秀平が好きで、秀平にはなんの不満もなかった。でも、少ししか会えない秀平を勝手に遠くに感じてしまった。


秀平と別れて、見つけた「普通の人」。

朝は早く家を出て、夕方には仕事を終えて。付き合う前はお互いの仕事帰りにディナーなんて。秀平のときにはできなかったことをした。

これが私の欲しかった普通なのかなあ、という思いには気づかないふりをして。


彼と順調だったのは最初だけ。

昇進型だった彼にとって出張や土日の会議はしばしば。いつのまにかあえる時間はなくなって。

結婚寸前で、さようならをした。


仕事帰り、電車を待つ間。

「結婚、遠いなあ。」

SNSに投稿すると、友達からメッセージが届いた。

「秀平とヨリ戻せばいいのに。」


私の理由で傷つけてしまった秀平と、ヨリを戻す?

「そんな都合よく、できないよ。」


次の電車までまだ15分。友達の写真にいいねをつける。

一通り新しい投稿を見終わってふと顔をあげると、向かいのホームに秀平がいた。


(秀平、今から仕事?でも秀平の家の方向だよなあ。)

(仕事着だし、転職でもなさそう。)

電車が来てもずっと秀平のことを考えていた。



「結婚」の投稿をして、秀平を見つけた次の日から、

不思議なことにいろいろな人からメッセージがくるようになった。


「秀平くんとはもう会ってないの?」「秀、今フリーだよ」「秀平が」「秀平は」……みんなして。


「会っちゃっていいのかなあ。」

今度はSNSに頼らず、自問自答してみる。


自分の気持ちを、信じてみるか。

メッセージの送信ボタンを押した。



後日聞いた話によると、付き合っていたのを知っていた人たちが口裏合わせをしてくれたみたい。

いろんな気持ちを抱えて今日、好きだった人に会いに行く。

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