第32話 校内戦決勝リーグ④
「やっとここまで来たな。......校内戦優勝か」
「まだ勝ってないわよ。最後の相手はあの『HELLHOUND』よ?」
「まさかここまで来れるとは思ってませんでした」
「私も......です......!」
「あと少しだね!」
「しゃあ! 勝って総合優勝しちゃおうぜ!」
今日まで6戦6勝を続けてきた俺達と、同じく6戦6勝のヘルハウンドが今日戦う。
校内戦決勝リーグ最終日。
泣いても笑ってもこれが本当にラストだ。
勝てば晴れて優勝、学年最底辺の汚名も綺麗さっぱり返上となる。
『さぁ、校内戦決勝リーグも最終日となりました! 全ての試合に負け無しの2チームが、ここで最終決戦を戦います! 皆さん盛り上がる準備は出来てますか!?』
会場の雰囲気も過去最高になり、席は満席。
1年の生徒や教職員はもちろんのこと、2年生や3年生の生徒までわざわざ北海道まで応援に来てくれている。
そして何より驚いたのが、軍の関係者も多く席に見られることだ。
確かに訓練校の優秀な生徒は軍に欲しいものだろう。だが、ここまでとは思わなかった。
『ではでは、今日の主役の方々に登場してもらいましょう!』
画面が真っ暗だったモニターが明るくなる。
『まずはこのチーム! 学年最底辺クラス、Jクラス6人で構成されているにも関わらず、AクラスやBクラスのチームを何度も
客席が盛り上がると同時に、モニターに俺達の顔写真が映し出される。
『そして、赤ゲートからは、予選、決勝リーグともに15分以内に勝利してきた優勝候補。Aクラスの6人の《ヘルハウンド》!』
中心に設置されたモニターが「ヘルハウンド」の6人の顔写真に変わる。
客席からは俺達の倍以上はあるであろう声援が
客席から聞こえる声は、最底辺は八百長をしていただとか、当たりが良かっただけだとか、散々な言われようだった。
逆にヘルハウンド側の応援は、単純に強い方を応援したいという奴らの、熱のこもったものだ。
「いいか? 相手が誰であろうと、俺たちのやることは変わらない。俺達は俺達の全力を尽くすだけだ!」
「「おう!」」
試合開始までもう時間がないため、俺達はすでに操縦席、丸いカプセルの中にいた。
『やぁ、まさか君達がここまで残るとは思っていなかったよ』
俺の聞き覚えのない声。
あいつらか。
「オープンチャンネルで嫌味ですか?」
すぐさま俺もオープンチャンネルに応答して返事をする。
『いや......? 何故君らよりも強い僕達が嫌味を言わなければならないんだい?』
「ふーんだ! 今のうちに言ってろ!」
今度は広人が答える。
『ははっ......威勢がいいね。けど、あまり吠えすぎると終わった後に惨めになるだけだぞ?』
「そろそろ試合開始です。切りますね」
流石のクラス長もこれは耐えられなかったらしい。
誰の返事も待たずにすぐに切ってしまった。
正直俺も少しイラッとしたが、クラス長のおかげで冷静になれた気がする。
「絶対に勝とうね一樹、みんな!」
「えぇ、なぜそこで一樹くんが単体で出てきたのかは分かりかねるけど、頑張りましょう? 桜井さん?」
「2人とも......落ち、着いて」
溢れ出る闘争心の矛先が変わってしまいそうだ。
そうこうしているうちに、最終日試合開始時間を迎えてしまった。
「俺達らしくいこう!」
モニターに大きく「START」と映った。
映ったと同時に灰色の何かが飛んで来た。
それはとても速く、目では追えないほどで、形的に例えるならば......
「......
「......嘘、でしょ?」
飛んできた金属製のソードは、動き出したばかりの春奈の左肩に直撃し、貫いた。
ナイトは肩周りにも装甲がついているにも関わらず、綺麗に貫いていた。
腕の付け根をやられた機体から左腕が落ちる。
ナイト、つまり
「全員散開! 俺達の位置がバレてるぞ!」
息が詰まりそうになったが、それを飲み込み指示を出す。
同じく固まっていたほか5人もその場から1歩後退する。
あまりにも正確過ぎる。
あまりにも速過ぎる。
あまりにも唐突過ぎる。
今までの相手より格段に強いと、全員が無言のうちに悟った。
俺はあたりを見渡す。
「市街地ステージだな」
「今まで通りでは通用しないかもしれませんが、とりあえずやれることをやりましょう」
「よし、高いところから見てみるぞ!」
広人が真っ直ぐ、近くの割と高さのあるビルへと向かっていく。
それを見て俺はクラス長に追って護衛するようにと言った。
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