第31話 校内戦決勝リーグ③

 戦闘中に休憩など存在しない。


「中央突破されました! 3人です。ナイト2人にガンナー1人です」


「クラス長すぐにそこを離脱しろ!」


「了解、です?」


「広人は耳を塞いでろ!」


 直後、轟音と共に広人の前の森が焼け焦げる。

 激しい爆発に敵の3機は巻き込まれる。

 対戦闘機兵用地雷。

 クラス長や広人のようなガンナーやスナイパーは、銃の他に爆薬の類も扱うことが多い。爆発の異常な威力は広人とクラス長持っていたものを、固めて置いたために生まれたものだ。


「なるほどね。今まで使ったこともなかった地雷、をあんなに近い距離に置いたのはこのためだったのね」


「まだだ! 広人出てきたところを狙い撃て!」


「あいよ!」


 数秒が経ち、爆発による煙と砂埃が晴れ始める。

 機兵の影が見えてくる。

 数は......!


「3機だ! 広人逃げ」


 敵を目視した時にはすでに遅かった。

 広人の左右を機兵が通り過ぎる。刹那、広人の機兵にはバツ印のような赤い紋章が浮かび上がった。

 そして程なくしてモニターに文字が映る。

 《飯島 広人Dead》


「奈々美さん、後ろのガンナーを先に殺ろう。俺はナイトの足止めをするから行って!」


「作戦失敗だ。春奈と桃咲はすぐに俺達と合流、クラス長は残り2機の警戒を! 全員まだ隠れている2機の奇襲に気を付けろ!」


「「了解!」」


 流石ブロックを勝ち抜いてきただけはある。

 これだけバラバラに動いているにも関わらず、個々が素早く状況把握をして最善の行動をしている。

 地雷群の爆発にしても、ナイトの2人は咄嗟にガンナーの前に出て威力を盾へ吸収させた。

 そしていくら激しくヒビが入ったとはいえ、タンクの象徴とも言える盾をあっさりと切り捨てて、身軽になった体で攻撃へと即座に転じて広人を葬ったのだ。

 明らかに戦い慣れた彼らの動きからして、中等部で機兵操縦を習った者達だろう。


「ああぁぁ!!」


 またしても2機同時に動き出したナイト達は真っ直ぐ俺へと向かってくる。

 右の機兵が首のあたりに、左の機兵が膝下あたりにそれぞれソードを振るってくる。


「く......っ!」


 棒高跳びの背面跳びのごとく機兵をジャンプさせて、下から来るソードを躱す。

 右の機兵が素早くソードの向きを変えて振り下ろしてくるが、それを俺は自分のソードで受け流した。

 不格好な着地をして、すぐに体制を整えて顔を上げる。

 目の前に刀身が見えた。

 すかさず俺はそこに自分の刀を重ねる。


「流石に2機は無理があったか......!」


 鍔迫り合いをする俺の後ろを狙うべく、もう1機が走り出した。

 この状況で後ろを取られるのはいくらなんでも危険すぎる。

 が、動こうにも目の前の機体はそれを許してくれそうにはない。

 絶体絶命とはこのことか。


「ここまでか......」


 俺は諦めようとした。

 その瞬間、後ろで金属音がした。ソードがぶつかり合う音が鳴った。


「春奈!」


「ごめん、遅くなった!」


 俺は左足を1歩引き、再び強く踏みしめて下から突き上げるように機兵を弾く。

 不意をつかれたその機兵は、その勢いを殺すことは出来ず、僅かなリカバリーが生まれた。

 春奈はそのチャンスを逃さない。


「チェンジ!」


 俺と春奈が入れ替わり、リカバリーをしていた機兵にソードが突きつけられる。

 春奈の相手をしていた機兵は俺が抑える。


「EnemyKill」

「EnemyKill」


 表示は2つ。

 春奈が倒したのは1機。......ということは。


「一樹くんガンナーを殺ったわよ」


「了解。すぐ戻って来て!」


 これで残りは目の前のナイトと、未だ姿を見せない2機のみ。

 順調すぎるほど順調で、とても驚いている。


「よし、このままいけば......」


 その後俺達はナイトを倒したところで、タイムアップとなった。

 何はともあれ決勝リーグ初勝利を収めることが出来た。

 その日俺はすぐに合宿所へと向かい、布団に入ったところで意識が途切れた。

 相当疲れが溜まっていたのだろう。


 次の日の決勝リーグ2戦目。

『試合終了! 勝者、ビューティフルフラワー!』


「しゃあ! やったな一樹!」


「あぁ、なんとかなるもんだな」


 これまたあっさりと、敵を全滅させて勝利することが出来た。

 どのチームよりも努力した自信はあった。

 決勝リーグに挑むだけの努力ならば、いつだろうと惜しまずに時間を使ってきた。

 正直ここまでとは思っていなかったから、言葉が出ない。


 そのまま俺達は一度も負けることなく、決勝リーグ7日目。つまり最終日、校内戦総合優勝チームが決まる試合を迎えた。

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