第29話 校内戦決勝リーグ①

 まだまだ暑さに苦しむ8月。

 俺達は北海道に来ていた。


「さすが北海道は涼しいな」


「そうですね。今日の最高気温は20度くらいだそうですよ」


「まじかよ! 俺卒業したら北海道に住もうかな......」


「何言ってるの、卒業したらパイロットになるんだから涼んでる暇はないんだよ?」


「パイ、ロット......私も......なれる?」


「そうよ。私達は全員揃って最速でパイロットになって、戦争を完全に終わらせるのよ。ちゃんとその事を分かってるのかしら」


 戦争を終わらせる。

 言葉にすることは簡単だが、それを成し遂げるには俺1人では圧倒的に力不足だ。だがこの6人なら、俺達第一高校の生徒の力を合わせればあるいは......。

 ......よそう。現実味の無い話は頭を混乱させる。


「クラス長夏合宿後半の詳しい予定表は届いたのか? 集合時間と場所と日数だけでここまで来ちゃったけど、いつ試合があるのかは知っとかないとな」


「はい、ここに着いた時に先生に貰っておきました。日数に関しては通達があった通りで1週間。予選各ブロックの優勝、準優勝チームの合計8チームによる総当たり戦を、毎日行っていくらしいですね」


「なるほど......これは上がるのが大変そうね」


 総当たり制となるとトーナメント制とは違い、実力の差が如実に現れる。

 つまり7戦行って勝ちの数が多いチームが優勝。勝ちの数が同じ場合はキルした機兵の数が多い方が、それでも同じ場合は合計タイムが少ない方が勝者となるルールだ。


「結局8チームってどこが残ったの?」


「それも書いてあった気が......あ、ありました。Aブロック優勝『HELLHOUNDヘルハウンド』準優勝『暗殺者アサシン』、Bブロック優勝『SnowAngelsスノウエンジェルズ』準優勝『ヘブンズゲート』、Cブロック優勝『BeautifulビューティフルFlowerフラワー』準優勝『フェニックス』、Dブロック優勝『SoulソウルResonateレゾネイト』準優勝『ビーツ』、以上の8チームです」


 8チーム中6チームがAクラス、Bクラスで構成されている、妥当な組み合わせ。その中に最下クラスJクラスとCクラスのチームが混ざっている。


「あれ? ってことは今日も試合はあるんだよな? こんな所にいていいのか!? もう行かないとやばいんじゃないのか!?」


「ちょっと落ち着け広人。それも分かっててここにいるだろ? ......クラス長? どうしたそんなぽかーんと口を開けたままで......」


「試合開始まであと30分です......」


「「「クラス長ぉぉぉ!!!」」」


 この展開、何だか少し懐かしいような......





 北海道第二軍基地のすぐ近くに位置する、戦闘機兵の訓練所。

 俺達が試合をしている様子は、これまで負けてしまったチームの人達が集まっているドームに映し出される。


「はぁ、はぁ、......ふぅ。それで、俺達はどこに向かえばいいんだ?」


「あ、『BeautifulFlower』の皆さんですね! お待ちしておりました、こちらへどうぞ!」


 案内係のようで、こちらに手を振っている。

 俺達は小さな部屋へと案内された。そこにはバーチャルモジュールが6つ設置してあった。


「よし、とにかくここまで来たんだ。今まで負けてきた人達のためにも1つでも多く勝つぞ!」


「もちろんだぜ!」


「当然です」


「頑張り......ます......」


「全力でいこうね」


「全部勝つわよ」


 1人ずつ右手を出して重ねていく。

 俺が1人1人目を合わせていくと分かる。全員目に力がこもっている。


「よーし、行くぞ!」


「「「あぁ!」」」


 バーチャルモジュールに入り、あらかじめ教えて貰っていた解除コードを入力する。

 電源が入りモジュール内のモニターがつく。


「戦闘機兵『訓練機』起動!」


 ......Start code input confirmation


 視界が晴れてゆく。





 どわぁぁぁ!!!


 ドーム内が歓声に包まれる。

 負けてしまったチームも、それぞれ言いたいように応援をしている。


「おーい! 茅山くーん! 負けたら承知しないからね!」


「雪乃ちゃん! 危ないよ!」


「京子ちゃんも落ちちゃいそうだよ〜」


『さて、皆さんお待たせしました! まもなく校内戦決勝リーグを始めます! 全員カウント準備は良いかな!?』


 ドーム内の歓声がさらに大きくなる。

 ドーム内の全員が手を天井へ掲げる。


「「「......3!」」」


『......2!』


「「「......1!」」」


『決勝1日目、試合開始!!!』





 モジュール内のモニターに表示されたカウントダウンが0へと変わった。戦闘機兵の操作が可能になる。


「ここは......森林ステージですね」


「森林か......今までずっと廃墟ステージだったから少し動きづらいな」


 森林ステージでは乱雑に配置された背の高い木のせいで、中遠距離型武器職の攻撃力は半減される。

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