第22話 親善試合③
「奈々美さんも聞いてたと思うけど、前が戦闘になってるから後ろから出ていって先に
「えぇ......けどなんだか誘導されている気がするわ」
「誘導?」
「盾役の後ろに前衛攻撃職がいるのは、誰にでも予想が出来る気がするわ......考えすぎかもしれないけれど」
確かにその通りだ。俺でも思いつくようなアイデアを、Cクラスの人達が思いつかないわけが無い。
そしてそれはすぐに連携の乱れを招く......
「一樹!
「今行く......くそっ!」
そんな俺達の行動もすべて読まれているわけで、簡単に援護など出来るはずもない。俺と奈々美を前に行かせまいと、3人がかりで弾幕を張ってくる。
「クラス長、広人、こっちはいいから早く前を!」
「分かった! あっち倒してすぐに戻ってくる!」
くそ......攻撃の一波目が崩れただけでこの有り様かよ
「青葉! 後ろ!」
「......っ!」
桃咲の後ろに回った槍を持った機体が、勢いをつけ走り出す。槍が桃咲の機体に突き刺さるかと思った時......!
「お待たせ!」
広人の放った弾丸が
「広人......! 私はこの
同じ盾持ち剣士でも、あちらの方が動きが良く見えるから春奈がやられるのも時間の問題だろう。早く援護に行きたいが......3人引き付けれているだけで充分......!
さっきまでいたはずの3人のうち、1人がいなくなっていた。
くそ! 見逃していた......どこだ、どこにいる!
「クラス長! あの槍持ちをやるぞ〜!」
「了解です。僕が引き付けるので、その間に撃ち抜いてください」
クラス長が桃咲と槍持ちの間に入り威嚇射撃を行い、注意を引きつけ横に逃げる。広人の狙撃のおかげなのか、ランサーは目標を変えてクラス長を追っていく。
「一樹くん、私達も仕掛けるわよ。2人なら何とかなるかもしれないわ」
「そうだねここにいても状況は変わらないからね」
変わらないどころか、悪くなるかもしれない。当初の作戦はすでに形を成しておらず、完全に個々の判断で動いている。それほど不安定な戦いは無いもので......1つ落ちれば崩壊する。
「飯島くん、今ですよ!」
「任せろい!」
上手く立ち回りながら、いつの間にかクラス長は広人が撃ちやすい広い場所へと出ていた。
待っていたかのように放つ広人の弾丸は一直線でランサーへと向かっていく。
よし、まずは1機......!
「広人! 危な......」
「ぐあっ! くそっ! ごめんみんな......」
モニターの広人の名前の欄が「Dead」の文字に変わった。広人の横にいるのは少し前まで俺と奈々美さんへ銃を撃っていた機体。
心配していたことが起こってしまった。広人がやられれば、強攻撃の援護射撃はなくなり敵にとっては有利になる。
「うーん悔しいなぁ。皆頑張れ......!」
俺の視線の先で敵のナイトが春奈の機体の上に立ち、剣を突き立てていた。さらに、シールダーの突進により、桃咲は激しい音と共にビルへと叩きつけられる......!
「......茅山......くん......!」
「一樹くん! どうするの!」
「茅山くん僕は何をすればいい!」
分からない、どうすればいいんだ......! この状況を何とか出来る作戦なんてあるのかよ!
「......っ!」
「桃咲さん!」
シールダーの相手をしていた桃咲が、他3人の一斉射撃に倒れた。
駄目だ......勝てるわけが無い。盾役が2人ともやられてしまったんだ、もう......
「沖津くん、援護お願いね」
「奈々美さん......何を?」
「何って......戦うのよ」
「だって、3対5だよ? 盾役もいないのに無茶だよ......!」
奈々美さんは2本目の
「じゃあ、あなたはそこで見ているの......? 私の知ってる茅山 一樹はそんな弱い人じゃなかったわよ......」
「そんな事言ったって......!」
俺は強くなんてない......本当は弱虫で、意気地無しで、自分のことを守るだけで精一杯のくそ野郎なんだ。そんな俺に出来ることは......!
俺は刀を強く握り直し、地面を蹴り出した。
「ふふっ......お帰りなさい一樹くん!」
顔は見えなかったけど、奈々美さんは俺に優しく微笑んでくれた......それが分かった。俺は1人じゃない、仲間がいる、この6人ならいつか戦争を終わらせることが出来る......そう思える仲間が!
「やっぱCクラスは強いね......」
「茅山くん達も最後の攻撃にはヒヤヒヤしたわよ、いい仲間ね!」
「ははは......本当に」
俺達は負けた。最後の攻撃にもあっさりと対応し、いとも簡単に俺を含めた3人を倒した。だけど、悔しくはない。俺達にとってとても得るものが多い試合だった......と思う。
「本当にありがとうね水無さん」
「いいのいいの、私達も連携の確認になったしね!」
連携の確認......か。俺達ではそのレベルまでしか相手にならないということだな。
「ななみん、また試合しようね〜」
「次は絶対に負けないわ」
校内戦で優勝なんて、俺達はどれだけつけ上がっていたのか。まだまだ訓練が必要だ......!
その時俺は、自分よりも強い相手がいることが少し嬉しかった。まだ上がある。まだ上がっていけるということだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます