第20話 親善試合①
「「親善試合!?」」
俺の前には驚く広人と春奈、考え込むクラス長と奈々美さん、そして何を考えているか分からない桃咲がいる。
「そうそれもCクラスのチームとね」
「Cクラスですか......デモ機とは違ってなかなか手強そうですね」
「そうかもしれないわね、けれど相手にとって不足なしよ」
親善試合とはそのままの意味で、チーム同士がお互いに承諾をした上での試合だ。ルールは校内戦公式ルール、1チーム6人までで構成されるチームで武器は無制限。30分以内に決着がつかない場合は、残っている機体の数で勝敗が決められる。安全面を考慮して、校内戦を含め全ての試合は訓練機、バーチャル世界での試合とされている。
そして、なぜCクラスの優等生が俺達Jクラスの劣等生を相手にしているかの理由は、少し前に遡る。
「あ、おはよう広人」
「んん? あぁ、おはよう......ふぁぁ」
広人が寝ている横で出来るだけ静かに支度をしていたのだが、どうやら起こしてしまったようだ。布団から顔だけ出して、芋虫のような状態になっている。
「ははっ眠たそうだな」
「うぅん、一樹こそこんな早くにどうした?」
現在時刻朝8時。早くないぞ広人......!
「今日こ買い出しは俺の当番だろ?」
「あ、そっか! いってらっしゃい、俺は寝る!」
あぁ、芋虫が
「......じゃあクラス長、留守よろしく」
「はいお任せ下さい。お気を付けて」
毎日毎日訓練と家事で、そろそろみんなの疲れもたまることかな......。
俺はそんなことを考えながら、合宿所の階段を下り近くのスーパーへ向かった......いや、向かおうとした。
「......ん〜? あれれ昨日の子だ〜」
不思議なテンポの話し方に着物、誰がどう見ても間違え用がない。
「桐島さん! どうしてここに?」
「うん、私もそう思うよどうして君がここに〜?」
だめだ、本当にこの人と話していると、どこかリズムを崩されている気がする。あと、質問に同じ質問を返すのはマナー違反だと思うのだが......。
「俺、僕はここで戦闘機兵の操縦合宿をしてるんだけど......」
「おぉ〜私も同じだよ〜」
ん? 今この人なんて......?
「ちなみにどこの学校に?」
「えっと、なんだっけ第一高校で通じるのかな〜?」
第一高校、つまり私立第一戦闘機兵訓練高等学校で訓練を行っている学年は1つだけで......。
「えっ同い年!?」
「私は今高1だよ〜?」
着物を着たその姿は本当に大人びていて、大学生くらいだと思っていた。これが同い年だなんて、どこかの幼なじみにももう少し大人になって欲しいものだ。
「同じ学校だったなんて驚きですよ。ちなみに何クラスなんですか?」
「Cクラスだよ〜君たちは......I《アイ》かJかな〜?」
桐島さんはちらりと俺が出てきた合宿所の棟の番号を見てそう言った。合宿所はクラスをまたいで組んでいるチームを除けば、基本的に2クラスごとに棟が分けられている。
「お恥ずかしながらJですね......」
「そっか〜大変だね〜」
高い順位のクラスほど、下の順位のクラスを馬鹿にする傾向があるが、この人に限ってそんなことは無いだろう。......もっとも哀れみの視線が一番辛いのだが。
「結! どうしていつもこうすぐいなくなるの!」
「お迎えに来ましたよ、ミス桐島」
ツインテールの茶色がかった髪の毛の女性と見覚えのある金髪の男性。
この女の人どこかで......?
「あれ? 茅山くん!?」
あぁ、この人は......。
「......
「ミス水無、知り合いかい?」
「うんまぁ、同じ中学でね」
彼女の名前は
「あ、この金髪のが
「はいはーい! みんなのアイドル金李亜だよ、よろしくやでっ!」
どこかのアイドルかと思わせるようなフリフリとしたスカートをはいた、オシャレな女性。
「佐伯 美波、よろしくです」
身長が低くて、小動物みたいな女の子。ただ、メガネを指であげる姿を見ると誰かを思い出す気がするのだが......。
「東条 裕樹、タンクの心得ならいつでもお教えするよ〜!」
俺はあまり身長は低くは無いのだが、東条 裕樹は恐らく190cmを超えているのであろうか、とても大きい。縦にも横にも。
「茅山 一樹です。よ、よろしく〜」
これはなんというか、キャラが濃すぎる......!
「ん〜あっ! そうだ茅山くん一緒に訓練しようよ〜」
「えっと......桐島さん? どういう......」
「あ、訓練試合をやろってことやんな?」
俺には彼女等が何を考えているのか分からない。普通に考えればCクラスがJクラスと合同訓練をしたところで得るものは少ないはずなのだ。
「どうしてJクラスの俺達と......?」
「だって『サプライズ茅山』くんのチームだから」
待ってください。本当に少しだけ待ってください......!
「中学のあだ名を出さないで!」
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