第9話 戦闘機兵①
次の日は朝6時に体育館の前に集合になっていた。そこに停まっているバスで神奈川基地へ行く。
今日はFクラスからJクラスまでの人が戦闘機兵隊の人達から基本的な事を教えてもらい、それからここに帰って来て実際に実技の訓練をするらしい。
バスはクラスごとに乗り、ペアで隣同士に座っていく。バスの右側前から5番目席の窓側に奈々美さん、通路側が俺、前の列の窓側に桃咲、通路側に春奈、俺らの後ろの列の窓側に広人、通路側にクラス長が座っている。
朝が早かったこともあり、奈々美さん、桃咲、春奈の3人は動き始めて15分で寝てしまい、クラス長は本を読んでいる。広人は珍しく静かに外を見つめていた。仕方ないので暇を持て余していると、俺も寝てしまった。
暫くバスに揺られると、クラスの他の連中が騒ぎ出したので、目を開けて外を見る。
神奈川基地がすぐそこに見えていた。時計を確認すると約1時間半進んでいる。
随分と寝てしまったようだ。
バスは門をくぐり、基地の中へと進んでいき、倉庫の前に5台並んで停まった。Fクラスから順にバスから降り、倉庫の中へと入っていく。
中へ入ると、1クラスに1人ずつ戦闘機兵隊の人が待っていた。
俺達の担当者は
若くて身長が高く、誰がどう見てもイケメンと言うてあろう整った顔つき、更に爽やかな笑顔で迎えてくれた。
女子が騒ぐのも頷ける。
「Jクラスの子達だね、北川です。今日はよろしく!」
聞いていてとても落ち着く声で、頼れる先輩の様な雰囲気だ。
「それじゃあ、知ってる人も多いと思うけど戦闘機兵の説明を始めるね」
そう言うと、パソコンを操作しスクリーンに画像を投影させた。
「まずは戦闘機兵について、基本的なことからです。知っての通り、戦闘機兵は2020年の第三次世界大戦で初めて導入された、新型の兵器の事を指します。当時、戦闘機兵は適能者が少なく、力を持て余していました。しかし、現在では量産型の戦闘機兵も多く生産され、基本性能はオリジナルには劣るものの、オリジナルのように適応者ではなくても乗れるようになっています」
スクリーンに『Jupiter(ジュピター)』と書かれた量産型の戦闘機兵の画像が映っている。
隣に映っている比較対象の人間を見るに、サイズは8〜9mぐらいだろう。
紺色のボディで、背中から人が入れるようになっている。
量産型ということもあり、操縦部以外は最低限の装甲しか装備されておらず、可動部分は動かしやすいように装甲が付いていない。
基本武器はサブマシンガンと粒子の高速振動により形成される刀のみだ。
飛ぶことは出来ないらしい。
「次にオリジナル機についてです。先程説明した通り、戦闘機兵にはオリジナル機と量産機があり、ここ神奈川基地にもオリジナル機は3機、戦闘準備を整えて待機しています。オリジナル機の基本性能は量産機の上をいき、それぞれが固有の能力を持っています」
スクリーンの内容が変わり、『Tor(トール)』と書かれたオリジナル機が映っている。
黒ベースに黄色のラインが入った機体で、量産機より少し太めの手足の可動部分にもきちんと装甲が付いている。
何より特徴的なのは、固有武器であるハンマーだ。ハンマーに関する詳しい情報は書かれていない。
「他に『Hel(ヘル)』と『Odin(オーディーン)』という機体があります。後ほど3機全て実際に見て頂きます」
オリジナルの戦闘機兵を生で見れるということで、生徒達はかなり盛り上がっている。
「続いて、操縦方法についてです。こちらに関しては事前に学校側で教えて頂けたということで、要点を絞ってお話しします。今回は疑問に思った人も多いと思う、起動キーについですが、量産型の戦闘機兵にはそれぞれ起動キーがあり、他の人には起動できない仕組みなっているのです」
北川さんがそこまで話した時、1人の生徒が静かに手を挙げた。
「起動キーってどんな形しているんですか?」
「いい質問ですね。そうですね.....一般的な車の鍵のような形を想像して頂ければいいかと思います。更に、鍵が奪われても起動できないように、機兵の操縦席で鍵を回した後、パスワードの入力も必要となっています」
機兵はとても厳重に保管されているようだ。
そういえばここに来るまでに外には出ていなかったが、倉庫に待機しているのだろうか。
「次にオリジナルについてですが、こちらは起動キーがありません。起動キーはありませんが、適応者が乗ると自動的に起動するようになっています。つまり、人が戦闘機兵を選ぶのではなく、戦闘機兵が人を選ぶという訳です」
適応者以外、オリジナル機には乗れないということで、数人の生徒達が顔を見合わせながら自分達など乗れるはずがないと残念そうな顔をしている。
「最初は乗れなくても、人よりも努力して乗れるようになったという前例も僕は知っているので、皆さんも頑張ってください」
そんな生徒達の表情を見て北川さんがフォローする。
「そろそろ僕等が戦闘機兵を見る番だね。移動するので、はぐれないようについて来てください!」
そう言うと、北川さんは歩き始めた。
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