第8話 クラスメイト③

 

「それで、茅山くんは遠山さんとはどーゆー関係なのさ?」


 パンを頬張りながら飯島が言う。


「どうってただペアだっただけだぞ?」


 うん、それだけだ。お互いの秘密は知っているが俺達はただのペアだ。


「ペアだっただけで一緒に登校するもんか!それに遠山さんが毎日先生に茅山くんの調子を報告してたぞ?毎日お見舞いに行ってた証拠だ!」


「なんでそんなに怒ってるんだよ」


 飯島は俺を睨みつけている。


「遠山さんは俺の初恋の人でなぁ!中学の3年間怖くて1度も話しかけれなかったんだ!なのに......なのにぃ......!!」


 今度は言ってて悲しくなってきたのか、落ち込んでいる。実に感情豊かで面白いやつだ。


「それより茅山くんじゃなくて一樹でいいぞ」


 この話を続けると面倒くさそうなので話題を変える。


「お、そうか!じゃあ俺のことは広人でいいぞ!」


 何とも扱いやすいやつだ。


「僕は沖津 健二。飯島くんのペアさ、よろしく」


「茅山一樹だ。よろしく」


 何故クラス長のような運動が出来そうなのがJクラスになってしまった理由がよくよく分かった。


 ペアがあれだもんな......


 俺は広人の細々しい体をチラリと見る。


「次は私ね。桜井 春奈よ、春奈でいいわよろしく一樹くん」


「よろしくな。何かスポーツでもやってたのか?」


 春奈は身長が俺より少し低いくらいで、クラスの女子の中で一番高く、女子にしては筋肉があるほうだろう。


「小学校の時からずっとバスケットボールをね」


「中学の時に全国大会出場してるらしいぜ!すごくね?」


 横から広人が割り込んで来た。


「いやいや、1回戦で負けちゃったから全然だよ」


 1回戦でも全国なら充分すごいと思うのだが。


「......私は......咲......葉......す。......しく......します」


 桃咲の声は弱々しく、小さかったので聞き取れなかった。


「ん?なんて?」


「ごめんごめん、この子すごい人見知りが激しくてね。桃咲 青葉です、よろしくって言ってるわ」


 横にいた春奈が桃咲の頭を撫でながら慌ててフォローしてくれた。


「よろしくな桃咲」


 自分の中で出来るだけ優しい声を出したが、桃咲は春奈の後ろに隠れたまま頷いただけだった。


 俺達はクラス分けテストの時の話をして、昼の時間を終えた。


 俺の予想通り、広人&クラス長ペアは広人の体力の無さが完全にクラス長の足を引っ張ったらしい。桃咲&春奈ペアは桃咲が途中で足を捻挫し、歩くところは全て春奈がおんぶしていたそうだ。


 5限、6限は明日行われる、戦闘機兵特別学習の事前指導があった。


 A〜Eクラスの人達は既に行ったらしく、体育館に集まったのはF〜Jクラスの人達だけだった。


『......えーでは、事前指導を始めます。学年の先生より諸注意です』


 舞台の上に男性が上がってくる。


『はい、では私からは諸注意についてです。既に聞いているとは思いますが、明日は神奈川基地へ戦闘機兵隊の方のお話を聞きに行きます......神奈川基地へはクラスごとにバスで移動し、到着した後もクラスごとの行動になると思うので、まとまって行動するように!軍の方の言うことを聞き、くれぐれも学校の名前に泥を塗らないようにして下さい。以上で終わります』


 そう言うと舞台袖へ歩いていった。


『その他先生方何かありますでしょうか? ......無さそうなので、これで終わります。教室に戻ったら担任の先生の指示に従うように......解散!』


 生徒達が次々に立ち上がり、教室へと戻っていく。


「一部取って後ろに回してくださーい」


 教室へ全員が戻ってくると、和泉先生は全部で10ページあるプリントの束を配った。


 一番上の表紙には「戦闘機兵操縦マニュアル 〜基本〜」と記してあった。


「これを明日までに一通り目を通すようにね〜」


 そう言うと和泉先生はそのまま6限を全てプリントを読み込む時間にした。


 基本編と言っても最低限の操縦の仕方は書いてあるので、大事なところにはマーカーを引きながら読んでいった。


「......旧型戦闘機兵には起動キーはありません、ってどういう事だろう......」


 少し気になるところはあったが、6限の時間が終わったので、片付けて家で読んで来ることにした。


 クラスでの初日はまずまずなものだった。弁当を忘れるハプニングはあったが、クラスの中に奈々美さん以外に話せる人が出来たのは十分な成果と言えるだろう。

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