第18話 三月に絶対魅力的!
ヴィオッティ作曲「ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調」さんからのお手紙
もう、三月も半ばに近くなりました。日本では、卒業や退職、転勤の時期ですね。
わたしは、この時期に、日本で最高の魅力を発揮いたします。
それは、どうしてなの? と言われると、とても回答がむつかしい。
でも、わたしが持っている、イタリア的な、歌うような旋律の美しさと、ソノリティのわかり易さ、その楚々とした味わいが、そもそもの源泉なのでしょう。
実際わたしは、演奏の仕方によって、随分イメージが変わります。
冒頭から、イタリアンな魅力たっぷりにふるまう事も出来れば、もっと薄墨的な味わいも発揮します。そこは演奏者の方の個性です。
もっとも、わたしは、学生さんの勉強用の協奏曲というイメージが結構強いかもしれません。
でも、あのブラームス先生が、わたしを大好きだったことは、わりと有名なお話です。お友達のヨアヒムさんと一緒に、わたしを演奏して、なみだぐんでいらっしゃったとか、伝えられております。
あの、全面おひげの恐ろしそうな先生が、ですよ。(若いころの写真は、そうではありません。・・・筆者)
学校でのお別れ、職場でのお別れ、そうして新しい出会いと新しい仕事の始まり。日本の皆様は何かと大変な時期と聞いておりますが、わたしのもつ、独特な、決して暗くはない、ある種の「感傷性」が、日本の皆様のお心に、不思議な共鳴をもたらすのだと思います。
ヴィオッティ先生は、それはもうたくさんの「ヴァイオリン協奏曲」(29曲とか・・・)をお書きになりました。いまはすべての曲を録音で聞いていただくことができるようになりましたが、大体、基本的なスタイルはみな同じなのです。その中で、おいしい、おいしい、秘伝のたれを、濃縮し、凝集されたのが、わたし、そうして次の「第23番ト長調」さんなのです。
イタリアの作曲家の、特に短調で書かれた作品には、たとえば、タルティーニさんの「悪魔のトゥリル」とか、とっても日本人の皆様にはピッタリな曲がございます。
どうぞ、イタリアの音楽も、ごひいきにお願いいたします。
では、チャオ!
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ヴィオッティ作曲「ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調」
「ヴァイオリン協奏曲第23番ト長調」
ヴァイオリン:ローラ・ボベスコ
指 揮 :クルト・レーデル
管 弦 楽 :ライン・パラティナ国立管弦楽団
オーケストラが、とってもイタリア的じゃない、控えめな音であることが、か えってボベスコさんの、楚々とした美しい歌にぴったりと合った奇跡の名演奏。
でも、中古のLPが、けっこうお高い場合もあって、びっくりすることも・・・。
フィリップス国内盤CD(30CD-3029)
ヴィオッティ作曲『ヴァイオリン協奏曲』全集
ヴァイオリンと指揮:フランコ・メッツェーナ
管 弦 楽 :ヴィオッティ室内管弦楽団 ほか
(伊)ダイナミック(CDS498/1-10)
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