第11話 元気よく歌いましょう!
「むすんでひらいて」さんからのお手紙
日本の皆様、もう、いつもお世話になっております。
わたくし「むすんでひらいて」と申します。
そう、あの「むすんでひらいて」ですよ。
さあ、大きなお口で、みんなでうたいましょう。
「むすんで、ひらいて、手をうって~~~~♪♪」
そうそう、とってもお上手ですよお。
あ、そうそう。みなさん。
私の出自につきまして、今はもう、きっと多くの方はご存じなのでしょう。
1986年に、海老沢敏先生がお書きになった「むすんでひらいて考」という、けっこう大きなご本によって、わたくしがいったい、どのように今のわたくしになったのか、先生はご本の中で、「もう、これだけなのかあ、いやいや、まだまだ!ほらこんな資料も!」と次ぎ次ぎに貴重な資料をお示しになりながら、綿密な解明をして行かれました。
「え?知らない?」
まあ、そう言う方もおありでしょうから、念のため、出てまいりました。
みなさんは、わたくしの作曲者が誰なのか?
について、もしかしたら、単純に「ルソー」作曲。
と、お考えかもしれませんよね。
けれども、実は、単純に、そう言い切れるものではないのだぞ、ということを海老沢先生は証明してゆかれます。
確かに、J.J.ルソー(あの有名な社会学・教育学の祖)さん作曲の、牧歌劇「村の占師」にまで、源流がさかのぼってゆくことは事実のようですが、わたくしがここまでたどり着くまでには、まず欧米において、膨大な音楽が創作されていたのです。
その中には、「賛美歌」あり、「ピアノ」や「ハープ」、「フルート」のための変奏曲(クラシック音楽界では結構有名な、J.B.クラーマーさんがピアノの為の変奏曲を作曲しています。)「ピアノの連弾」作品もあり、「ギター」の独奏曲ともなり、一種の「芸術歌曲」もあり、アメリカではカントリー風の歌にもなり、やがて日本に入って来ると、まず明治9年の「賛美歌・グリーンヴィル」から始まって、明治15年には「見わたせば」という名前で、とても「雅(みやび)」な唱歌になりました。これは少し年配の方ならご存知かもしれません。「見わたせば、あおやなぎ、花桜・・・」という詩です。(やましんさんは、なぜか昔からちゃんと知っていらっしゃいました。もっともこの方は、小・中学校からお家に帰ると、毎日、ではないけれど、しょっちゅう唱歌の本を初めから最後まで歌う、なんてことをやっていたという、かなりの変わり者さんではありましたので・・・)
と思ったら、いつの間にか、「見渡せば、寄て来る、敵の軍艦おもしろや・・」という、軍歌(吉本光蔵作歌、となっています。)にもなりました。これには、他のヴァリエーションもありました。また「進撃迫撃行進曲」という、すごいのもあります。その一方で明治の末から、日本の幼児教育現場で「お遊戯歌」としてのわたくしが広まってゆきます。
ちなみに、おとなり韓国でも、それはもう美しい唱歌があり、また遊戯歌として広く知られているのだそうですし、中国では、これも大変勇ましい軍歌にもなっているようです。
で、現在の日本では、もっぱら「お遊戯歌」として定着しているという状況でございます。
詳細は、海老沢先生のご本で、お読みください。
どうか、末永く世界中の皆様がわたくしの、兄姉たちを、仲良く歌ったり演奏したりしていただけますと、うれしいです。「うちが本家だ」なんていう喧嘩なんかは、どうぞしないでくださいね。よいお歌は、平和に仲良く楽しく歌うものですよ。わたくしのお歌が、将来まで、決して「哀(悲)歌」にはなりませんように。
じゃ、みんなで、もういちど元気よく、歌いましょう!
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(参考)
「むすんでひらいての謎」・・・CDです。
(キングレコード KICG3077)
かつてLPレコードもありましたが、収録内容は、CDの方が豊富。
「むすんでひらいて考」 海老沢敏 氏著・・・ 本です
(岩波書店 1986年)
J.J.ルソー作曲の「牧歌劇 村の占い師」は、現在古楽器によるいくつかの演奏がCDになっていて、割と手に入りやすいと思います。
ここでは、1956年に録音された、老舗的な興味深いCDをご紹介。
ニコライ・ゲッダさんのお名前があったりします。
J.J.ルソー「村の占い師」
指揮 ルイ・ド・フロマン
ルイ・ド・フロマン室内管弦楽団
J.Micheau. N.Gedda. M.Roux EMIフランス(7243 5 75266 2 3)
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